エビ・カニ・ヤドカリ

2020年3月 1日 (日)

甲殻類(十脚目)の画像集を更新しました

前回に引き続き、甲殻類の画像集の更新トピックスを紹介します。
今回は十脚類です。
最近はヨコエビなどの微小甲殻類だけでなく、
エビカニなどの大型甲殻類にも力をいれてます。

18_1-palaemon-sp

スジエビ属の1種 (Palaemon sp.)です。
多摩川河口で群れを作っていたエビです。
スジエビ属なのは確かだと思いますが、種レベルの同定ができていません。
文献を見ても多摩川河口のスジエビを種レベルで同定しているものはなく、
謎です。

19_alpheidae

テッポウエビ科(Alpheidae)の1種です。
テッポウエビ科は熱帯、亜熱帯の珊瑚礁を中心に分布します。
日本では多くの種の分布が琉球列島北部で途切れますが、
一部の種が珊瑚礁の分布域より北に生息しています。
黒潮域では房総半島が分布北限、対馬暖流域では北海道西岸の忍路まで2種が分布します
この個体の最終地点は宮城県なので太平洋側の北限を超えています。

20_-crangon-sp

エビジャコ属の1種 (Crangon sp.)です。
ややこしい名前ですがエビです。
ただエビジャコ科(Crangonidea)は第1歩脚が不完全なハサミ(亜はさみ)であることが特徴ですので、
ややこしい名前の由来も理解できます。
三番瀬で採取しました。

21_pagurus-dubius

次はヤドカリです。
ユビナガホンヤドカリ(Pagurus dubiusです。
近縁のホンヤドカリと比較すると歩脚の指節が前節よりも明らかに長く、
第2脚の前節と腕節の上縁に長毛が列生します。
干潟に多いようです。

22_pagurus-lanuginosus

ケアシホンヤドカリ(Pagurus lanuginosusです。
前甲長4mm内外、岩礁の潮間帯に生息します。
ハサミ脚は右側が大きく、ハサミ脚と歩脚に長毛が密生します。
第2触角は深紅で目立ちます(日本海岸動物図鑑)。
歩脚は明るい緑色で黒色の斑点があります。
歩脚の色がヨモギホンヤドカリ(Pagurus nigrofascia)に似ていますが、
歩脚に黒い帯があることで区別できます(海辺のエビ・ヤドカリ・カニハンドブック)。

23_-philyra-cf-pisum

マメコブシガニ (Philyra cf. pisumです。
マメコブシガニは干潟のアイドル的なカニです。
宮城県の万石浦で採取しました。
ただ、この個体は殻の後端に突出している突起があり、
その部分が本来のマメコブシガニと異なります。
東京湾産のマメコブシガニと比較検討したいと考えています。

24_hemigrapsus-sanguineus

イソガニ(Hemigrapsus sanguineusです。
ハサミ脚は平滑無毛で外面上縁付近には大小の斑点があります。
日本海岸動物図鑑によれば岩礁・転石地で普通に見られるとのことですが、
同じモクズガニ科のヒライソガニ(Gaetice depressusよりは
少ないように思います。
あるいは生息環境が異なるのかもしれません。

25_hemigrapsus-takanoi

タカノケフサイソガニ(Hemigrapsus takanoiです。
どこにでもいるカニの代表です。
干潟や河口部の石の下などに生息しています。
ケフサイソガニ(Hemigrapsus penicillatusによく似ていますが、
腹面の点紋はタカノケフサイソガニの方が細かく数も少ないです。

26_hemigrapsus-penicillatus

ケフサイソガニ(Hemigrapsus penicillatusです。
海辺のエビ・ヤドカリカニハンドブックによれば、
排水が流れ込むような場所でも見られることがあるとのこと。
普通種ですが、タカノケフサイソガニよりも見つけにくいです。

27_gaetice-depressus

ヒライソガニ(Gaetice depressusです。
甲長22mmまで、甲面が著しく扁平で平滑。甲面の色彩は変化に富みます。
額は中央がわずかに窪みます。
前側縁には眼窩外歯を含めて3歯ありますが、第3歯は小さく痕跡的です。
磯で普通に見つかりますが、淡水の影響を受ける場所には生息しないそうです。

28_macrophthalmus-mareotis-japonicus

ヤマトオサガニ(Macrophthalmus (Mareotis) japonicusです。
干潟のカニです。ハサミを上下させるウェービングを行います。
日本海岸動物図鑑によれば甲長29mmまで、眼窩外歯はあまり尖らず
後方は大きな切れ込みによって第2歯に続き、第2歯の後方に小さな切れ込みがあります。
前側縁の第2歯の位置で甲は最大幅になります。
雄は雌よりもハサミ脚が著しく大きく発達し、歩脚よりも長大になります。
青森県から種子島までの泥干潟に生息するそうです。

29_scopimera-globosa

コメツキガニ(Scopimera globosaです。
こちらも干潟のカニです。コメツキガニもウェービングを行います。
日本海岸動物図鑑によれば甲長9mmまで、甲は前方に狭まった球状。
甲面は心域を除き顆粒が散在します。
眼窩外歯の後方に切れ込みが1個あります。
ハサミ脚は雌雄ともに左右は同じ大きさ。
ハサミ脚、歩脚の長節の内・外面には長卵形の鼓膜状構造があり、呼吸に関与した器官とされています。

30_pachygrapsus-crassipes

イワガニ(Pachygrapsus crassipesです。
よく見られるカニですが、1890年以前には日本での記録がなく、
アメリカ大陸沿岸からの移入種とみられているそうです(日本海岸動物図鑑)。
動きはすばやく、力が強く、ハサミに挟まれると非常に痛いとのことです
(海辺のエビ・ヤドカリカニハンドブック)。

今回の更新ポイントはここまでです。
現在、ヨコエビの更新準備中です。

 

2019年11月24日 (日)

クロベンケイガニ(Chiromantes dehaani):小櫃川河口干潟(盤洲干潟)2019年10月

今回も小櫃川河口干潟のカニです。

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クロベンケイガニ(Chiromantes dehaani)です。
アカテガニと同じ属ですね。
アカテガニとの共通点は甲に切れ込みがないことですね。
全体的に茶褐色、ハサミの付け根付近が紫色です。
“海辺のエビ・ヤドカリ・カニ ハンドブック”渡部哲也著、文一総合出版によれば、
甲幅は30mmとのこと、この個体は成体と思われます。

 

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クロベンケイガニはとても攻撃的でした。
カメラのレンズに向かってハサミを振り回しています。
暗いところに逃げ込もうとするのですが、
足元が暗かったのでどんどん近くに寄ってきてしまいました。
彼?彼女?の敵はカメラのレンズで、人は隠れる場所という認識だったようです。

 

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どのカニもそうですが、
クロベンケイガニも背後に回り込まれるのをとても嫌うので、
甲の写真を撮るのが大変です。

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なんか、甲の模様が“微笑みの顔”に見えますね・・・。

2019年11月17日 (日)

アシハラガニ(Helice tridens):小櫃川河口干潟(盤洲干潟)2019年10月

今回も小櫃川河口干潟のカニです。

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こちらはアシハラガニ(Helice tridens)です。
アカテガニよりも水辺に近い場所に生息しています。
湿地にも泥干潟にもいます。
小櫃川河口干潟では最も目立つカニかもしれません。
大潮の干潮だったので、特に多かったのかもしれません。

 

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なんというか、写真に撮りやすいカニです。
アカテガニと異なり、警戒すると動かなくなります。
こちらが大きく動かなければじっとしているので、
写真には撮りやすいです。
ただ、シラサギが来た時に一斉に隠れたのは印象的でした。

脚はつるつるしていて、剛毛がありません。
細い脚を泥に突き刺しながら歩きます。

 

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甲の側縁には切れ込みが2個あります。
見方によっては3個のようにも見えますね。
“海辺のエビ・ヤドカリ・カニ ハンドブック”渡部哲也著、文一総合出版によれば、
甲幅は35mmとのこと、アカテガニよりもちょっと大きいです。

 

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正面からのアングルです。
ハサミが大きいですね。
アシハラガニはモクズガニ科に属していますが、
ハサミに毛はないですね。

 

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こちらは別個体です。
少し水辺から離れたところにいました。
ただ、台風の後なのでどこもドロドロでしたが。
小道にも多くいて、人が来ても逃げずにじっとしているので
気を付けないと踏んでしまいそうでした。

こんなに写真を撮らせてくれる甲殻類はいないですね。

 

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こちたは小型個体です。
ハサミが小さくて少し緑色が含まれていますね。
緑色の草と、枯葉と、泥によく溶け込んでいます。
保護色がよく機能しているので動かないのかもしれないですね。

2019年11月 9日 (土)

アカテガニ(Chiromantes baematocheir):小櫃川河口干潟 2019年10月

台風19号が通過した後の10月14日に千葉県の小櫃川河口干潟に行ってきました。
小櫃川河口干潟は盤洲干潟とも呼ばれています。
泥干潟だけでなく、広大な湿地が広がっているのが特徴です。

台風の被害を見に行ったという訳ではなく、
この日が大潮だったので前々から計画していたんですよね・・・。

余談ですが、台風は“ねこのしっぽラボ”の近くを通過しました。
デジカメの気圧計は963hPaを記録しました。
多摩川の近くなのでレベル5のエリアメールも来ましたが大丈夫でした。
小櫃川河口干潟調査の生き帰りに通過した武蔵小杉は大変そうでした・・・。

さて、小櫃川河口干潟のアカテガニ(Chiromantes baematocheir)です。
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これだけ大きければ持ち帰って顕微鏡で観察する必要はありません。
現地で写真を撮ることにします。

“海辺のエビ・ヤドカリ・カニ ハンドブック”渡部哲也著、文一総合出版によれば、
甲幅は30mmとのこと、この個体は成体ですね。
以下、“海辺のエビ・ヤドカリ・カニ ハンドブック”の記載を参考にしました。

アカテガニはベンケイガ二科に属しています。
同じ科のベンケイガ二(Sesarmops intermedius)も赤い色をしているので似ていますが、
ベンケイガ二のハサミはざらざら、アカテガニのハサミはツルツルです。

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ただ、防御姿勢の時はハサミを隠してしまいます。
アカテガニは警戒心が強く、なかなか良いアングルで写真を撮らせてくれません。

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こちらは甲を背後から観察した写真です。
アカテガニはシャアと同じくらい赤いイメージがありますが、
個体によっては褐色で前部が黄土色のこともあります。
甲の縁に切れ込みがないことも特徴ですね。
ベンケイガ二は甲に切れ込みがあるので、ここでも区別できます。

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側面からの写真です。
足場が悪い場所での撮影なのでベストアングルでの撮影はできませんでした。
とはいえ、この写真では脚をよく観察できます。
アカテガニの脚には太い毛、というかと棘がたくさん生えています。

アカテガニは朝方はたくさんいましたが、
昼頃には大型個体は見つからなくなってしまいました。
夜行性なのかもしれないですね。
そのうち、また会いに来ましょう。

2019年1月27日 (日)

ゾエアとメガロパ

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横浜の金沢八景で2014年5月に採取したゾエア幼生です。
ゾエア幼生はエビ、ヤドカリ、カニなどの十脚類の幼生ですが、
写真のゾエアはカニの幼生と思います。
ただ、種や属の識別は難しいですね。

カニ類ではゾエアの次にメガロパ幼生になります。

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写真のメガロパは2017年8月に牡鹿半島で採取したものです。
種類は不明です。
ですので、最初の写真のゾエアとは種類が違う可能性があります。

ゾエアはカニとは全く異なる形をしていますが、
メガロパは立派なハサミを持っていてカニに似ています。
カニとの違いは腹部を伸ばしているところですね。

さて、ゾエアが脱皮を行ってメガロパになるわけですが、
ゾエアの何処にメガロパのハサミや胸脚が入っているのか不思議に思っていました。

ですが、ついに見つけました!

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ハサミを持つゾエアです。
どうやらメガロパになる直前の状態みたいですね。
胸脚もできています。
ハサミはゾエアの頭部や腹部に収まっていたわけでは無いのですね・・。
思いっきりはみ出してます。
このゾエアは昨年の夏に男鹿半島で採取したものですが、
写真を整理していて気がつきました。
写真を撮っているときは流れ作業なのであまり気がつかないものですね。

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こちらのゾエアも同じ時に採取したもので
胸脚ができています。

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こちらは同じ場所で採取したメガロパです。
時空間が一致しているので同じ種類かもしれないですね。

2018年8月 3日 (金)

タカノケフサイソガニ(Hemigrapsus takanoi):多摩川河口干潟 2017年11月採取

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去年11月に多摩川河口の干潟で採取した
タカノケフサイソガニ(Hemigrapsus takanoi)です。
どこにでもいる珍しくないカニ(駄ガニ)です。

実体顕微鏡で複数枚撮影してつなぎ合わせた画像です。
多分、20枚くらい重ねています。
つなぎ合わの精度を良くするために、
視野の9割程度をオーバーラップさせるという
非常に手間のかかる方法で撮影しています。

この方法は仕上がりは綺麗なのですが、
効率が悪すぎるので
今後はOLYMPUS Tough TG-5に移行する予定です。

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腹面を観察した画像です。
腹部が狭いので雄の個体ですね。
口の周りに黒点がありますが、
腹部にはありません。
これはタカノケフサイソガニの特徴です。

タカノケフサイソガニは近縁種のケフサイソガニ(Hemigrapsus penicillatus )と
よく似ていますが、
「海辺のエビ・ヤドカリ・カニ・ハンドブック」によれば
ケフサイソガニは腹部にも黒点があるので識別できるそうです。

タカノケフサイソガニは十数年前に
ケフサイソガニから分離された非常に新しい『新種』です。
近年になるまでタカノケフサイソガニとケフサイソガニは混同されてきたということなので、
それだけ良く似ている種ということなのでしょう。

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こちらはハサミの拡大画像です。
ハサミの外面の毛の房が特徴的です。
モクズガニと似ていますね。
(タカノケフサイソガニはモクズガニ科に属しています)

ハサミの外側にも黒点があり、
タカノケフサイソガニの黒点はケフサイソガニの黒点よりも小さいということですが、
これは同じくらいの大きさの個体を並べてみないと識別が難しいかもしれません。