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ヨコエビの同定記録

2018年11月18日 (日)

チビヨコエビ科 Gitanopsis属:茨城県 2018年1月

秋も深まってきて眠いです。
個人的には春よりも秋の方が眠いです。

今回はデータ整理中のヨコエビの画像です。
というか、今年は甲殻類や土壌生物のデータ整理で終わってしまいそう。
ホームページの更新は来年ですね。

1im180105__21_x3_1mm

今年の正月に茨城県で採取したヨコエビです。
基本的にはチビヨコエビ科(Amphilochidae)に似ています。
そのなかでもGitanopsis属に似ています。
同じチビヨコエビ科のApolochus属にも似ているのですが、
ポイントがよく分かりません・・。
今回はGitanopsis属の1種としておきます。

このヨコエビはこれまでにも見つけていましたが、
不明種として処理していました。

ヨコエビ_分類群190(260)
http://plankton.image.coocan.jp/Crustacea3-2-1-3-1-260.html

10月にブログで紹介したチビヨコエビ科(Amphilochidae)の不明種にも似ています。

さて解剖の記録です。
まず触角です。

2im180105__21__x40_500m

上が第1触角、下が第2触角です。
どちらも触角も短いです。
第1触角には毛状の棘があります。

3im180105__21__200m

顎脚です。

4im180105__21__x100_200m


大顎です。
長く伸びている部分は鬚(Palp)と呼ばれる部分です。

5im180105__21_12_x40_500m

第1胸脚です。
掌縁が丸みを帯びています。
咬脚のタイプは“Transvers (Rectipalmate)”と呼ばれるタイプのようです。

6im180105__21_22_x100_200m

第2胸脚です。
掌縁が丸みを帯びていますが、第1胸脚よりは直線的です。
咬脚のタイプは“Transvers (Rectipalmate)”と呼ばれるタイプのようです。
10月にブログで紹介したチビヨコエビ科(Amphilochidae)の不明種とは、
形状が大分異なります。

7im180105__21_3_x40_500m

第3胸脚と第4胸脚です。

8im180105__21_5_x40_500m

第5胸脚と第6胸脚です。

9im180105__21_7_x40_500m

第7胸脚です。

10im180105__21_1_x40_500m

第1尾肢です。
内肢と外肢の両方を持ちます。

11im180105__21_3_x40_500m

第3尾肢です。
内肢と外肢の両方を持ちます。
第2尾肢は分離し損ねました。

12im180105__21__x40_500m

尾部の形状です。
これを見ると第2尾肢も二肢型のようですね。

13im180105__21__x100_2

尾節板です。
尾節板は細長い三角形で、
第3尾節が両脇から包むように伸びていて、
全体的には漢字の山のような形状になっています。
この形状は10月にブログで紹介したチビヨコエビ科(Amphilochidae)の不明種に類似します。

14im180105__21__x40_500m

腹節です。
ヒョウ柄ですね。

2018年10月21日 (日)

ヒメハマトビムシ種群(Platorchestia pacifica)の解剖:秋田県2018年8月

「ねこのしっぽ -小さな生物の観察記録-」のヨコエビ画像集
ヒメハマトビムシ(Platorchestia platensis)という種を掲載していますが、
日本産のヒメハマトビムシに対し、
Platorchestia platensisという種名を使うのは不適切のようです。
というのも、そもそもPlatorchestia platensisはアジアには存在しないとのことです。

では、日本産のヒメハマトビムシの種名(学名)は何なのか、
という問題が起きますが、
現状、Platorchestia joiが本命のようです。
ただし、他にもP. pacificaP. parapacificaなどの種も
ヒメハマトビムシとされてきたようなので一筋縄にはいかないようです。
この辺りの研究史はかなり複雑ですが、
H. Ogawa氏のヨコエビがえし、ハマトビムシ入門(9月度活動報告)
詳しくまとめられているのでこちらをご参照ください。

さて、前述したヒメハマトビムシのページは
広義のヒメハマトビムシ種群(Platorchestia spp.)に修正するのが妥当として、
それだけではすっきりしないので、
新たに男鹿半島で採取したヒメハマトビムシを材料に、
日本産土壌動物 分類のための図解検索【第二版】青木淳一編著と
H. Ogawa氏のヨコエビがえし、ハマトビムシ入門(9月度活動報告)を参考に
細かく同定していきたいと思います。

1_im180821__16_x1_25601920_2mm

まず全体像です。
この個体は男鹿半島南岸の鵜ノ崎海岸で採取した個体で、
比較的大型の個体です。

2_im180821__16__x2_25601920_1mm

頭部の画像です。
喉部は平坦です。
この個体は既にヒメハマトビムシ種群と同定しているので、
あまり意味はないですが、
「喉部が緩く突出する」ホソハマトビムシ属(Paciforchestia属)と区別できます。
(日本産土壌動物参照)
ついでに、第1胸脚触角の先端が柄部第5節の中央に達していないことも分かります。
この辺りの形質はオカトビムシ系の分類に必要なようです。

3_im180821__16_1_x40_25601920_500m

第1触角です。
柄部3節、鞭部6節です。
ハマトビムシ科は第1触角が短いことが特徴です。
昆虫もそうですが、陸上生活を行うには2対の触角は邪魔なのかもしれませんね。

4_im180821__16_2_x3_25601920_1mm

第2触角です。
柄部3節、鞭部13または14節です。

5_im180821__16__x40_25601920_200m

分類にあまり必要性がない部位ですが、
顎脚です。

6_im180821__16_11_x40_25601920_500m
第1胸脚です。
特徴的な形態ですね。

7_im180821__16_21_x40_25601920_500m

第2胸脚です。
ここが最大のポイントです。
掌縁部に2個の突出があります。
ニホンヒメハマトビムシ(Platorchestia pachypus)と区別する上で大事な形質です。
といっても、未成熟個体では2個の突出が不明瞭なので安定的な形質ではないかも。
さらに、メインテーマのPlatorchestia joiP. pacificaP. parapacificaについてですが、
第2咬脚前節下縁に剛毛を欠くことからP. joiは除外できます。
(ハマトビムシ入門(9月度活動報告)参照)
狭義のヒメハマトビムシ(P. joi)ではないということです。

8_im180821__16_31_x5_25601920_500m
第3胸脚です。
前節と腕節の長さを見比べます。
前節が腕節よりも明らかに長ければP. joi
ほぼ同じ長さであればP. pacificaP. parapacificaです。
今回は見た目には前節の方が長いように見えるのですが、
実際に計ってみると前節が0.491μm、腕節が0.485μmで、
小数点第3桁を丸めると同じ0.49μmになってしまうので、
ほぼ同長と言って良いのではないでしょうか。
といっても、実際に間違いなくP. joiという個体を比較検討してみないと、
どこまでを同じ、あるいは違うと言ってよいのか
判断できないと思います。
あとは、前節と腕節は太さが違うので目の錯覚も起きそうです。
ちゃんと計らないと難しいですね。

9_im180821__16_42_x5_25601920_500m

第4胸脚です。
あまり必要性のない部位です。
今回気がついたのですが、ハマトビムシは第3胸脚と第4胸脚の長さが異なるのですね。
ヨコエビの多くは第3胸脚と第4胸脚が区別できないほど似ているので、
派生的な形態といえるかもしれません。

10_im180821__16_52_x5_25601920_500m

第5胸脚です。
あまり必要性のない部位です。

11_im180821__16_61_x3_25601920_1mm

第6胸脚です。
第6胸脚自体には見所はないのですが、
基節板はちょっとしたポイントです。

12_im180821__16_6_x40_25601920_200m

こちらは第6胸脚の基節板です。
ヒメハマトビムシ属は第6胸脚の基節板後葉の前下縁が直角、またはここに突起があります。
少々分かりにくいですが写真中央下部の丸い角のことです。
角は丸いですが、前縁と下縁が直角に交わっています。

13_im180821__16_72_x3_25601920_1mm

第7胸脚です。
あまり必要性のない部位です。

14_im180821__16_11_x40_25601920_500

左右の第1腹肢です。
ここ以降、今回の核心の分類学的に深い部分に入ります。

15_im180821__16_21_x40_25601920_500

第2腹肢です。
第2腹脚柄部縁部の剛毛数は9本です。
P. pacificaは3本、P. parapacificaは7本とのことなので、
P. parapacificaにより近いでしょうか。
第2胸脚の形態から除外しましたがP. joiは13本だそう。
きっちり数が合わないのはモヤモヤしますが、
おそらく成長に伴って数が変化するのではないでしょうか?

16_im180821__16_22_x40_25601920_500

もう一本の第2腹肢です。
第2腹脚柄部縁部の剛毛数は9本です。
左右の数は安定しています。

17_im180821__16_31_x40_25601920_500

第3腹肢です。
第3腹脚柄部縁部の剛毛数は10本です。

18_im180821__16_31_x100_25601920__2

第3腹肢にはもう一列の棘があって、
こちらは識別が難しいのですがおそらく6本です。

19_im180821__16_32_x40_25601920_500

もう1本の第3腹肢です。
第3腹脚柄部縁部の剛毛数は11本です。

20_im180821__16_32_x100_25601920_20

もう一列の棘です。
識別が難しいのですが6本です。
したがって、第3腹肢の棘は11本と6本の2列ということになります。
P. pacificaが9本と6本、
P. parapacificaが9本と5本とのことなので、
どちらとも判別できないです。
あえていえば、P. joiの11本と7本が一番近いのですが・・・。

21_im180821__16_1_x40_25601920_500m
気を取り直して第1尾肢です。
今回はあまり重要ではないですが、
オカトビムシ系の分類には必要な部分です。
側端棘の長さを見ます。

22_im180821__16_2_x40_25601920_500m
第2尾肢です。
ホソハマトビムシの種の同定には必要な部分ですが、
今回はあまり重要ではありません。
縁棘の本数を見たりします。

23_im180821__16_3_x40_25601920_200m

第3尾肢です。
オオハマトビムシとホッカイハマトビムシの識別には重要ですが、
今回はあまり重要ではありません。
下縁に棘があるか、ないかを見ます。

24_im180821__16__x40_25601920_200m
さて最後のポイント、尾節板です。
ここの棘の本数をみるのですが、
これはかなり難しいのではないのでは・・・?
この部分を綺麗に取り外すのは難しいですし、
必要倍率も微妙ですよね。

25_im180821__16__x100_25601920_200m

というわけで40倍では難しそうなので100倍で検鏡します。
ただ焦点深度が浅くなるので複数写真を見比べます。
とりあえず棘の本数は7本で間違いないようです。
また、頭部側に2本の棘が隣接して配置されています。
この特徴はP. pacificaに類似しますね。

P. parapacificaは頭部側に3本の棘が隣接して配置され、
合計本数は10本なので大分違いますよね。

ちなみに、P. joiは頭部側に2本の棘が隣接して配置され、
合計本数は8本です。

さて、まとめです。
どの形質を重要視するかによって結論が変わると思うのですが、
第2胸脚の棘の有無はデジタルなので、
これを最優先にしてみます。
すると、P. joiが除外されます。

第3胸脚は判断に迷ったので除外します。
ただ、前節と腕節がほぼ同長とすれば、
第2胸脚の結果と矛盾しません(P. joiが除外されます)。

次に、腹肢の棘の本数ですが、
きっちり合うものがないのでなんとも言えません。
第2腹肢に関してはP. parapacificaが最も近いです。

尾節板に関してはP. pacificaに特徴が一致します。

尾節板と腹肢のどちらを重要視するかで
P. parapacifica or P. pacificaが変化するのですが、
今回は尾節板に軍配を上げたいと思います。

ということで、P. pacificaとして同定します。

2018年10月 7日 (日)

チビヨコエビ科(Amphilochidae)の不明種

ありきたりの表現ですが、暑いですね。
最近はサンプリングにも行かず、ひたすらデータ整理をしています。
さて、今回はデータ整理中のヨコエビの画像です。
Im170503__40_1

Im170503__40_2

このヨコエビはこれまでにも見つけていましたが、
不明種として処理していました。

ヨコエビ_分類群190(260)
http://plankton.image.coocan.jp/Crustacea3-2-1-3-1-260.html

色彩はともかく似たような形態のものを集めたつもりですが、
複数種、場合によっては複数属含まれているかもしれません。
基本的にはチビヨコエビ科(Amphilochidae)に似ています。

昨年のGWに新潟県でこの種を見つけたので、
解剖を行って細かく観察してみました。

Im170503__40_3

まず第1胸脚です。
前節の掌縁が特徴的です。
掌縁と後縁は直角に近い角度です。

ちなみに右の写真は40倍(x4)の対物レンズで撮影した画像。
左は100倍(x10)のレンズで撮影した画像です。
40倍の方が解像度が低いですが、焦点深度が深いですね。
解像度と焦点深度を両立させるのは難しいです。

Im170503__40_4

次に第2胸脚です。
掌縁と後縁は直角よりも鋭角です。
Gitanopsis属に似ているのかなあ、と思っていたのですが、
文献と知識が不足していますし、
ネットで見つかるGitanopsis属の第2胸脚と
何かが違っているし、
チビヨコエビ科の不明種に留めておくのが良さそうですね。

Im170503__40_5

第3胸脚です。
覆卵葉があるのでこの個体は雌ですね。

Im170503__40_6

左が第4胸脚、右が第5胸脚です。

Im170503__40_7

左が第6胸脚、右が第7胸脚です。

Im170503__40_8

尾部です。
第3尾肢が分かりにくいですね。

Im170503__40_9
尾節板です。
漢字の山に似た形状です。
この辺りも特徴なのかもしれません。

ヨコエビは深いですね。
文献がたくさんあるところに行ったら、
あっという間に一日終わりそうです。

2018年9月 3日 (月)

このヨコエビの種名を教えてください!


全国のヨコエビ研究者の方のお力をお貸しください!

1_15

昨年のGWに新潟県糸魚川市で採取したヨコエビです。
このヨコエビは2014年に柏崎市、2016年に長岡市で採取していたのですが、
同定できていませんでした。
詳細は下記のページをご覧ください。

http://plankton.image.coocan.jp/Crustacea3-2-1-3-1-370.html
(上のページの中で“第2触角に副鞭”とあるのは、“第1触角に副鞭”の間違いです。)

昨年の新潟サンプリングでも複数個体を採取できたので細かく解剖してみたのですが、
やはり手持ちの文献では該当種が見つからず苦戦しています。

体長5mmくらいの個体が多いですが、
抱卵している個体は1cm程度になります。
小型の個体は淡い緑色ですが、大型の個体は薄い黄緑色に見えることが多いです。
体表面に黒色、または褐色の細かな斑点があります。

2_15_1

こちらは第1触角です。
先端から3節目くらいのところが茶色になっています。
副鞭もあります。
副鞭は3節です。

3_15_2

第2触角です。

4_15_1

第1胸脚です。
底節板が前方に張り出しています。

5_15_2

第2胸脚です。
第1胸脚と第2胸脚は似たような形状、大きさです。

6_15_3

第3胸脚です。
第6節(前節)に 第7節(指節)に近いところに、
3本(4本?)の棘があります。

7_15_4

第4胸脚です。
第3脚と同じく、第6節(前節)に 第7節(指節)に近いところに、
3本の棘があります。

8_15_5

第5胸脚です。
第6節(前節)に6本の棘があります。

9_15_6

第6胸脚です。
第6節(前節)に8本?の棘があります。

10_15_7

やはり第6節(前節)に棘があります。

11_15_

第3尾肢と尾節板です。
第3尾肢は二股に分かれています。
尾節板は単葉です。

ここまでが1個体目の解剖です。
続いて2個体目になります。

12_30

写真では薄い黄色に見えますが、
目視では薄い緑色に見えたような記憶があります。
実体顕微鏡に付けているCCDカメラは色の再現性が不十分なのです・・・。

13_30

頭部の拡大画像です。
複眼は円形です。

14_30_1

第1触角です。1個体目よりも鮮明に写せています。
先端から3節目くらいのところが茶色になっています。
副鞭は3節です。

15_30_2

第2触覚です。
鞭部が柄部よりも短いです。
鞭部は5節くらいでしょうか。

16_30__2

顎脚です。
分類の役に立つことは少ないみたいですが、
一応撮影しておきました。

17_30_

大顎です。
鬚部に焦点を合わせました。

18_30_1

第1胸脚です。

19_30_2

第2胸脚です。

20_30_3

第3胸脚です。
第6節(前節)に 第7節(指節)に近いところに、
3本の棘があります。

21_30_4

第4胸脚です。
形状は第3脚とほぼ同じです。
第6節(前節)に 第7節(指節)に近いところに、
3本の棘があります。

22_30_5

第5胸脚です。
第6節(前節)に6本の棘があります。

23_30_6

第6胸脚です。
第6節(前節)に5本の棘があります。

24_30_7

第7胸脚です。
第6節(前節)に5本(6本?)の棘があります。

25_30_

尾肢と尾節板です。
一個体目よりも尾節板の形がわかりやすいです。

26_30_3
第3尾肢です。
今回解剖した中では最も小さなパーツです。

ここまでが2個体目の解剖です。
続いて3個体目になります。

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全体像です。
この個体は尾肢の解剖に失敗したのですが、
胸脚の写りが良いので掲載します。

30_25_1

第1触角です。
先端から3節目くらいのところが茶色になっています。
副鞭は3節です。

31_25_2

第2触覚です。
鞭部が柄部よりも短いです。
鞭部は6節でしょうか。

32_25_1

第1胸脚です。

33_25_2

第2胸脚です。

34_25_3

第3胸脚です。
第6節(前節)に 第7節(指節)に近いところに、
3本の棘があります。

35_25_4

第3胸脚です。
第6節(前節)に 第7節(指節)に近いところに、
3本の棘があります。

36_25_5

第5胸脚です。
第6節(前節)に5本(6本?)の棘があります。

37_25_6

第6胸脚です。
第6節(前節)に6本の棘があります。

38_25_7

第7胸脚です。
第6節(前節)に5本の棘があります。

以上が解剖の結果になります。
この情報だけで種名が分かると良いのですが・・。
種名を知りたい理由ですが、ねこのしっぽラボで現在制作中の
ヨコエビの画像集をヨコエビの図鑑に格上げするために
できるだけ分類不明種を少なくしたい、というのが理由です。

学会や何らかの発表に使いたいというのではないので、
断片的な情報でもかまいません。
情報お待ちしています。

2018年3月12日 (月)

ハマトビムシ科:オカトビムシ(Platorchestia humicola)雄の解剖

1_im180107__44__x1_2mm

今年の正月に茨城県で採取したオカトビムシ(Platorchestia humicola)です。
オカトビムシはヨコエビのなかまですが、
森林の落ち葉の下などに生息しています。

ヨコエビは普通、水中で一生を過ごしますが、
オカトビムシを含むハマトビムシ科(Talitridae)は海岸や、
土壌など、陸域に生息します。
砂浜に打ち上げられた海藻を持ち上げると、
ピョンピョンと跳びはねる虫がいますが、
あの虫がハマトビムシ科のヨコエビです。

土壌に生息するハマトビムシは、
オカトビムシの他にも幾つかいるので
詳細な分類のために解剖を行いました。
分類には“日本産土壌動物 分類のための図解検索 【第2版】 青木淳一編著”
を使用しました。

2_im180107__44__x5_1mm

こちらは頭部の拡大画像です。
ハマトビムシ科の特徴は第1触角が短いことです。
昆虫もそうですが、陸域で生息するには
2対の触角は邪魔なのかもしれません。
オカトビムシは大きな眼を持っていますが、
洞窟に住むハマトビムシ科(イワヤトビムシ属)は
眼を失っています。
また、キタオカトビムシ属(Orchestia属)、
ヒゲナガハマトビムシ属(Trinorchestia属)、
オオハマトビムシ属(Traskorchestia属)の同定には、
第2触角の柄部に対して、
第1触角がどのくらいの長さがあるかも見ておく必要があります。

3_im180107__44__x3_1mm

いきなりショッキングな画像ですが、
矢印の部分の顎(喉)の輪郭も見ておく必要があります。
普通、顎(喉)の輪郭は底節板に隠れているので、
よく観察するには頭を分離する必要があります。
ホソハマトビムシ属(Paciforchestia属)は矢印の部分が、
緩く突出するそうです。

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こちらは第1触角です。
柄部は3節、鞭部は4節ですね。

5_im180107__44_2_x5_1mm

こちらは第2触角です。
第2触角は長いです。
スナハマトビムシ属(Talorchestiaでは
第2触覚柄部の第3節に突起があります。

6_im180107__44__x40_200m

こちらは口器の一部の顎脚です。
あまり分類には使いませんが、一応写真を撮っておきました。

7_im180107__44__x40_200m

口器の一部の下唇です。

8_im180107__44__x40_200m

たぶん第1小顎です。

9_im180107__44__x40_200m

こちらが第2小顎だと思います。

92_

大顎です。

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こんどは胸脚です。
まず第1胸脚です。
第1胸脚にはこぶ状の突起があります。
第1胸脚の構造は雄と雌で異なります。
写真の個体は雄です。
雌にはこぶ状の突起がありません。

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第1胸脚の拡大画像です。

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第2胸脚(咬脚)です。
雄の第2咬脚は大きいです。
雌は形が異なります。
オカトビムシを含むヒメハマトビムシ属(Platorchestia属)は
第2咬脚の掌部(鎌の部分が合わさる部分)の構造が大事です。
ヒメハマトビムシ(Platorchestia platensisには2個の突出があり、
ニホンヒメハマトビムシ(Platorchestia pachypusは緩く波打ちます。

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第2咬脚第7節の拡大画像です。
第2咬脚の先端部分が細くなっています。
これはオカトビムシ(Platorchestia humicola)の特徴です。

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第3脚です。
分類にはあまり関わりが無いですが、
一応写真を撮っておきました。

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第4脚です。
ヨコエビは第3脚と第4脚が似ていることが普通です。

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第5脚です。
ヨコエビの種類によっては第5脚の形状観察も大事です。

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第6脚です。
ハマトビムシ科(Talitridae)は第6脚の観察が重要になります。
とはいっても、脚の本体ではなく、
第6脚の基節と鰓の形状観察が大事になります。

19_im180107__44_6__x40_500m

こちらが第6脚の基節です。
矢印の部分の形状を観察します。
ヒメハマトビムシ属(Platorchestia属)は
この部分が“直角、または突起がある”そうです。
写真のオカトビムシの形状は直角に相当するようです。
ハマトビムシ科のほかの分類群は
この部分が滑らかに湾曲します。

20_im180107__44_6__x40_500m

こちらは鰓です。
ホソハマトビムシ属、ヒメトビムシ属、ヤエヤマオカトビムシ属、
ミズホトビムシ属は、第6脚の鰓が分類に重要です。

21_im180107__44_3_x40_500m

第3腹肢です。
第1,第2腹肢は同じ形状なので省略しました。
オカトビムシ(Platorchestia humicola)は
内枝・外枝の長さが柄部の70%以下、
ニホンオカトビムシ(Platorchestia japonica)は
内枝・外枝の長さが柄部とほぼ同長です。
この写真の場合、内枝・外枝の長さが柄部の70%以下なので、
オカトビムシ(Platorchestia humicola)で間違いないです。

22_im180107__44_1_x40_500m

こんどは尾部の構造です。
まず、第1尾肢です。
オカトビムシ(Platorchestia humicola)など、
ヒメハマトビムシ属(Platorchestia属)の多くは
第1尾肢の外枝に棘が無いですが、
ミナミオカトビムシだけは外枝に棘を持ちます。
また、幾つかの属では側端棘が他の棘よりも長いか、
あるいは短いか、同じ長さかが重要なポイントになります。
側端棘の形状も大事です。
ツメオカトビムシ属(Talitroides topitotum)では
側端棘がS字型になります。

23_im180107__44_2_x40_500m

第2尾肢です。
あまり重要ではないですが一応写真を撮っておきました。

24_im180107__44_3_x40_200m

第3尾肢です。
多くのヨコエビの分類で重要なパーツになります。
ハマトビムシ科でも、
オオハマトビムシ(Traskorchestia ochotensis)で
第3尾肢柄節の下縁に棘が無いことに対し、
ホッカイハマトビムシ(Traskorchestia ditmari)には
第3尾肢柄節の下縁には棘があるなど、重要なパーツです。
オカトビムシ(Platorchestia humicola)の場合は、
第3尾肢柄節の下縁に棘が無いようです。

25_im180107__44__x40_200m

尾節板です。
多くのヨコエビの分類で重要なパーツになりますが、
ハマトビムシ科ではそれほど重要ではないようです。

以上、オカトビムシ(Platorchestia humicola)の解剖でした。
ヨコエビの分類は面白いけど大変ですね。

2017年1月29日 (日)

カマキリヨコエビ 2016年9月北海道

今回はカマキリヨコエビ(Jassa 属)です。
カマキリヨコエビの雄は第2咬脚が大きくて、
かっこよいです。

かっこよいのですが、
何しろ昆虫のカマキリに比べると小さいので(3mmくらい)
男の子たちの興味を引くことはないでしょう・・・。

今回解剖する個体はこちらです。
北海道で採取しました。
第2触覚柄部は第1触覚よりも長いことが特徴です。
第2咬脚が大きいので雄です。
体長は3.4mm、スケールは200μmです。

Im160919___80_x3_2560x1920_500m

まずは第3尾肢です。

Im160919___80_3_x100_2560x1920_100m

スケールは100μmです。
先端にカギ爪のような構造があります。
日本海岸動物図鑑[II]のカマキリヨコエビ
Jassa slatteryi)のイラストに似ています。

次に第1咬脚です。
スケールは200μmです。

Im160919___80_1_x40_2560x1920_200m

掌部に2個の膨らみがあります。
これも特徴かもしれません。

第2咬脚です。
スケールは200μmです。

Im160919___80_2_x40_2560x1920_200m

第6節(前節)の基部近くの突出部(矢印の部分)が
棒状に伸びています。
これはカマキリヨコエビの特徴です。

次は第3胸脚です。
スケールは200μmです。

Im160919___80_3_x100_2560x1920_200m

分かりにくい特徴ですが、
第4節(長節)の末端(矢印の部分)が第5節(腕節)の
先端付近まで伸張しています。
この特徴は日本海岸動物図鑑[II]のカマキリヨコエビ
Jassa slatteryi)の記載に一致します。

次は第4胸脚です。
スケールは200μmです。

Im160919___80_4_x100_2560x1920_200m

第3胸脚と同じく、
第4節(長節)の末端(矢印の部分)が第5節(腕節)の
先端付近まで伸張しています。

第5胸脚です。
スケールは200μmです。

Im160919___80_5_x40_2560x1920_200m

第6胸脚です。
スケールは200μmです。

Im160919___80_6_x40_2560x1920_200_2

第7胸脚です。
スケールは200μmです。

Im160919___80_7_x40_2560x1920_200m

今回は同定が上手くいった方だと思います。
日本海岸動物図鑑[II]のおかげですね。

2017年1月22日 (日)

ハマトビムシ上科 2016年4月 新潟県柏崎市

今回は久しぶりにヨコエビです。
2016年4月に新潟県柏崎市で採取しました。
この種は触覚の柄部や第1咬脚に特徴があります。

 

160505_43004__63_x1_2560x1920_2mm

 

スケールは2mmです。
ハマトビムシ上科(Talitroodae)なのは間違いないと思います。
モクズヨコエビ科(Hyalidae)に似ているのですが、
詳細な同定には第3尾肢や尾節板を確認する必要があるらしいです。
とりあえず、今年のサンプリングでこの種が見つかったら
忘れずに第3尾肢と尾節板を確認しましょう。
今年はハマトビムシ上科の同定を進めたいです

 

まず第1触覚です。
柄部は濃い色で太くなっています。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_1_x5_2560x1920_500

 

続いて第2触覚です。
第2触覚も柄部は濃い色で太くなっています。
鞭部は12節です。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_2_x5_2560x1920_500

 

こんどは第1咬脚です。
ゲンコツのような形で特徴的です。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_12_x40_2560x1920_5

 

第2咬脚です。
よく発達しているの雄の個体と思います。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_2_x5_2560x1920_5_2

 

第3胸脚です。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_3_x5_2560x1920_500

 

第4胸脚です。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_4_x5_2560x1920_500

 

第5胸脚です。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_5_x5_2560x1920_5_2

 

第6胸脚です。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_6_x4_2560x1920_500

 

第7胸脚です。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63_7_x4_2560x1920_500

 

最後に尾肢です。
スケールは500μmです。

 

160505_43004__63__x5_2560x1920_500

 

残念ながら、側面からでは内枝、外枝の構造が分かりにくいです。
特徴を調べるには正面から観察する必要がありそうです。
第2尾肢、第3尾肢に棘がありますが、
これは同定に有効な特徴かもしれません。

2016年12月 5日 (月)

イッケヒゲナガヨコエビ属(Peramphithoe sp.) 千葉県2015年3月

今回もヨコエビです。

ヨコエビの脚をバラバラにして撮影するのは
残酷に思えるかもしれません。
なので、ヨコエビのデータ収集を始めた当初は
全体写真しか撮影しませんでした。
ところが、全体写真だけでは種レベルの同定はおろか、
科レベルの同定も難しい!
これではせっかくの標本も無駄になってしまうので、
去年あたりから積極的に解剖を行うことにした次第です。
そこまでして名前を調べることに意味があるのかという
哲学的問題もありますが。

死んでいると思ったヨコエビから脚を外すと、
どういうわけか脚が動き出したり、
1cm程度の大きさのヨコエビでも結構臭いがあったり
リアルに生死を感じる世界なのですが、
スーパーに並ぶカニの脚を見ていると思えば
無心になれるかもしれません。

さて前置きが長くなりましたが、
今回のヨコエビです。
2015年3月に房総半島先端の野島崎で採取しました。

写真1
150324__26_1280x960_x2

写真2
150324__26_1280x960_x40_


写真1は上から照明をあてた画像、
写真2は下から照明をあてた暗視野画像です。

このヨコエビは以前に掲示板でHo(No67)さんに
「ヒゲナガヨコエビ科のようです。
Peramphithoeだと思います。」とコメントを頂いていました。
ただ、そのときは全体写真だけだったので
今回は細部まで詳細に見ておきたいと思います。

Peramphithoeは日本海岸動物図鑑[II]では
イッケヒゲナガヨコエビ属と和名が付けられています。
日本海岸動物図鑑[II]によれば、
近縁のヒゲナガヨコエビ属(Ampithoe)とは、
「第1底節は前方に進展しない、
第3、第4胸脚の基節は膨れて楕円形」
であることで区別されています。

残念ながら、第1底節がよく見える写真がなかったので、
まずは第3胸脚から見ていきます。
150324__26_31_25601920_x40

たしかに「基節は膨れて楕円形」です。
もうこれだけでもPeramphithoeとして良さそうです。

次に第4胸脚です。
150324__26_41_25601920_x40

「基節は膨れて楕円形」です。

第5胸脚です。
150324__26_51_25601920_x40

基節はむしろ円形です。
日本海岸動物図鑑[II]のトウヨウヒゲナガ
(Peramphithoe orientalis)の第5胸脚のイラストに似ています。

第6胸脚です。
150324__26_61_25601920_x40

第7胸脚です。
150324__26_71_25601920_x40

変則的ですが第1咬脚です。
150324__26_11_25601920_x40

第2咬脚です。
150324__26_21_25601920_x40


日本海岸動物図鑑[II]のトウヨウヒゲナガ
(Peramphithoe orientalis)のイラストよりも
指節が短いです。
トウヨウヒゲナガではなさそうです。

あまり同定の役にはたちませんが口器の部分も見ましょう。
顎脚です。
150324__26__25601920_x40

大顎です。
150324__26__25601920_x40_2

小顎です
150324__26_1_25601920_x40

やはり、Ho(No67)さんの見立て通り、
イッケヒゲナガヨコエビ属(Peramphithoe sp.)で良さそうです。
無事に名前が付きました。

2016年11月28日 (月)

ユンボソコエビ科 新潟県2016年4月

今回もヨコエビですが、
写真少なめです。

そういえば、このブログに掲載されている写真の
半分くらいはヨコエビの脚かもしれません。
カニの脚と思えば美味しそうかも?

今回のヨコエビはこれです。
160503_430__32_x3_2560x1920

GWに新潟で採取したヨコエビです。
第1咬脚が大きいのでユンボソコエビ科だとは思います。

ユンボソコエビ科には、
ドロソコエビ属とユンボソコエビ属があって、
第3尾肢が単枝か、双枝かが決め手なのですが、
03174146
この写真では角度が悪い・・・。
単枝か、双枝か、これでは判断できません。
GWの時の私は経験が浅かった・・・。

今回はユンボソコエビ科にとどめておきましょう。

とりあえず、第1咬脚です。
160503_430__32_12_x40_2560x1920

第2咬脚です。
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教訓としては、
第3尾肢と底節板は、どんなヨコエビでも確認すること、
ですね。

2016年11月20日 (日)

ヤシャヒメヨコエビ属(Abludomekita) 北海道2016年9月

ここのところヨコエビブログになっていますが、
今回もヨコエビです。
ヨコエビ以外に好きなものというと、
最近ではダニ(ササラダニ)とかも面白いですね。

今回はこのヨコエビです。
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北海道の積丹半島で採取しました。
メリタヨコエビと思いますが、よく観察して見ましょう。

まずは第3尾肢です。
Im160919___69_3_x40_2560x1920

内枝が小さいです。
鱗状と言うよりは突起状ですが、
少なくとも外枝よりも内枝がはるかに小さいので、
メリタヨコエビ属(Melita)か、ヤシャヒメヨコエビ属
(Abludomekita)だと思います。

さらに第3尾肢を追求します。
先ほどの写真では分かりにくかったですが、
こちらの違う向きで本体とつながっている写真をみると、
先端に小さな節があるように見えます。
Im160919___69__x40_2560x1920

さらに拡大します。
Im160919___69__x100_2560x1920


第3尾肢の外枝の先端部に小さな先端節があることがわかります。
日本海岸動物図鑑[II]によれば、これは
ヤシャヒメヨコエビ属(Abludomekita)の特徴とのことです。

写真を撮っていたときには先端節に気がつかなかったのですが、
写真はできるだけ色々なアングルで撮っておくものですね。

では他の特徴もみます。

まず第1触覚の副鞭です。
Im160919___69__x100_2560x1920_2

副鞭は4節あります。

第1咬脚です。
Im160919___69__x40_2560x1920_2

Im160919___69__x100_2560x1920_3

不思議な構造をしていますが、
メリタヨコエビ属(Melita)とヤシャヒメヨコエビ属
(Abludomekita)と共通の特徴と思います。

第2咬脚です。
Im160919___69_2_x40_2560x1920

メリタヨコエビ属(Melita)と同じく棘が密生しています。

第3胸脚です。
Im160919___69_3_x40_2560x1920_2

細くて長いですね。

第4胸脚です。
Im160919___69_4_x40_2560x1920

第3胸脚と似ています。

第5胸脚です。
Im160919___69_5_x40_2560x1920

棘が多いです。

第6胸脚
Im160919___69_6_x40_2560x1920

しっかりとした歩脚です。

第7胸脚
Im160919___69_7_x40_2560x1920

第6胸脚と似ています。

総合的に今回のヨコエビはヤシャヒメヨコエビ属
(Abludomekita)でよさそうです。

なお、日本海岸動物図鑑[II]によれば、
メリタヨコエビ属(Melita)とヤシャヒメヨコエビ属
(Abludomekita)はよく似ていて、
近い将来に再統合される可能性があるとのことです。
実際、フトメリタヨコエビは、
Abludomelita rylovaeでも、Melita rylovaeでも
検索に引っかかります。
シノニムですね~。