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土壌生物

2019年2月16日 (土)

土壌生物の採取方法(トゲダニ詰め合わせ):川崎市2019年1月

前回のブログ記事の続きです。
自作の“DIY簡易ツルグレン装置”で採取したダニとトビムシを紹介します。
サンプルの腐植はお正月に近所の公園(川崎市)で採取したものです。
昆虫の幼虫とトビムシ、それにトゲダニ類を採取できました。
ササラダニが少なかったことが今回の土壌群集の特徴ですね。

まず、ハエダニです。
ハエダニ科(Macrochelidae)、ハエダニ属(Macrocheles sp.)と同定しました。
ねこのしっぽラボでは、ハエダニ属は2017年5月の新潟以来、2年ぶり2個体目です。
とはいえ、それほど珍しい種類ではないと思います。

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背板前端が突出しているか、そうでいないかでクチナガハエダニ属(Holostaspella sp.)かハエダニ属(Macrocheles sp.)かが分かれます。
本種の場合、やや判断が難しいのですが、
“日本ダニ類図鑑”と“日本産土壌動物”のイラストと比較すると
背板前端が突出しないハエダニ属(Macrocheles sp.)として良さそうです。

背板前端の背毛が1本失われていますね。
完全な標本はなかなか難しいです。

右下の画像は鋏角ですが、
細長い羽毛状の毛束があります。
“日本産土壌動物”の検索図説ではこの毛束を持つのは
ホコダニ科(Parholaspididae)とハエダニ科(Macrochelidae)になります。

では、ホコダニ科とハエダニ科をどう識別するかというと・・・。

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こちらは周気管後端の気門の拡大写真です。
周気管後端がくるっと湾曲してます。
これはハエダニ科の特徴です。

対して、ホコダニの周気管後端は直線状です。
過去の記事“トゲダニ亜目 ホコダニ科 ホコダニ属(Holaspina属) 茨城県2018年1月”をご参照ください。

ハエダニ科はトビムシや昆虫を補食するそうです。
今回のサンプルからはハエ・アブ類の微細な幼虫が多数見つかったので、
これらを捕食していたのかもしれませんね。

続いてヤドリダニ科(Parasitidae)です。

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背板が2枚に分かれていて、
大型の後胸板を持っています。
形態的にはEugamasus属に似ているように思います。

詳細な分類には背板毛と蝕肢の観察が必要なようですが、
ヤドリダニ科を初めて見たので見逃してしまいました。
なので、ヤドリダニ科の1種としておきます。
次回は属レベルまで持って行きたいですね。

ヤリダニ科(Eviphididae)です。

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ナミヤリダニ属(Copriphis sp.)と同定しました。
“日本産土壌動物”のコガネムシダニ(Copriphis disciformis)の記載に似ています。
周気管板の後端が幅広く、生殖板の後縁に達します。
第2~4脚の基節間は離れています。
(近縁のセマルヤリダニ属(Evimirus属)は第2~4脚の基節間が狭いです)
トゲダニにしては同定が容易なタイプですね。

こちらもヤリダニ科ですが、第2~4脚の基節間が狭いです。

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こちらはセマルヤリダニ属(Evimirus属)と思われます。
同じ場所にヤリダニ科の2属が共存していたのですね。
ねこのしっぽラボではヤリダニ科自体が初で、
一気に2属記載できました。

イトダニ科の1種です。

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Uroobovella sp.と思われます。
和名はタマゴイトダニ属でしょうか。
体長1.1mm。大きさ的にはキュウヒタマゴイトダニ(Uroobovella japanomarginata)に類似します。
日本ダニ類図鑑によれば胴長1.05mmとされています。
ただ、イトダニ科の同定は難しいので、
あまり自信がありません。
茶褐色で硬化が進んでいるので光が透過しにくく、
細かな構造の観察が難しいです。

小型のイトダニ科です。

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Uroobovella属に似ていますが、
図鑑の記載を読んでいても、これだっ、という確信がありません。
幼体かもしれないですし、個体数を増やして確認したいですね。

ホコダニ科の1種です。

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鋏角と気門の特徴を見る限り、
ホコダニ科なのは間違いないと思うのですが、
顎体突起と後胸板の有無を観察できていないので、
再観察が必要です。
採取地は家から徒歩圏内なので、後で採取しましょう。
蚊が発生する前に。

という訳でダニは終わりです。
初めて見るトゲダニが複数いたので満足度は高かったです。

続いてトビムシです。

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イボトビムシ科(Neanuridae)なのは間違いないですが、
細かな分類ができていません。
トビムシは多様性が非常に大きいので勉強が大変です。

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こちらはツチトビムシ科(Isotomidae)だと思います。
跳躍器が長いタイプですね。
トビムシの記載があっさりしていてすみません・・・。
興味が無いわけじゃないんですけど、
別の機会にちゃんとやりましょう。

2019年2月 7日 (木)

土壌生物の採取方法(DIY簡易ツルグレン装置)

土壌生物の採取をするには冬から春にかけての期間が適しています。
冬でも土壌生物は見つかりますし、
草が生えていないのでサンプルを採取しやすい。
そして何より蚊がいない!

そのような訳で今回は“ねこのしっぽラボ”で実際に使っている
土壌生物採取装置(DIY簡易ツルグレン装置)を紹介します。

まず材料ですが、こんな感じです。


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右側の上から、(1)金属製のざる、(2)用途不明のろうと、(3)プラスチック製の容器
この3つの部品でDIY簡易ツルグレン装置2号機を作ります。

左側は進化したタイプで、
(1)園芸用のフルイ、(2)プラスチック製の容器で、
これだけでDIY簡易ツルグレン装置3号機を作ります。

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それぞれ、こんな感じで組み立てます。
固定はビニールテープです。
途中で白色のビニールテープが無くなったので紅白のおめでたい感じになってしまいました。

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さらにアルミホイルで覆って遮光します。
この後、内部に各々150ミリリットルの水道水を注いでおきます。

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できあがった2号機、3号機を上から見たところです。
下のビニール袋にはサンプルの腐葉土が入っています。

冬になると落ち葉が積もりますが、
落ち葉の層と、土が接する辺りには黒く変色したボロボロの落ち葉があります。
この部分は薄いのですが、その部分(腐植)を採取すると
たくさんの土壌生物が見つかります。

また、採取場所ですが、森の奥深くに入って行かなくても、
車道脇の側溝付近で十分です。
側溝にたまった落ち葉を掃除するような感じで除去すると、
腐植が見つかることがあります。
さすがに町中の側溝は無理ですが、
山道の車道脇には落ち葉がたまっていることが多いですね。

今回は川崎市で採取しました。

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腐植を2号機、3号機に充填したところです。

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こちらが2号機の写真。
落ち葉が細かくなっています。
土壌生物が落ち葉を分解している証拠ですね。
2号機のザルの編み目は粗いので数mm程度の大型の土壌生物がターゲットです。

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3号機の写真です。
フルイの編み目が細かいので1mm以下のダニやトビムシの採取専用です。

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土壌を充填した簡易ツルグレン装置を風通りの良いベランダに放置します。
本格的なツルグレン装置は白熱電灯を照射して土壌生物をトラップに追い込むのですが、ねこのしっぽラボの方法は太陽光を利用します。
その代わり、3日~1週間ほど時間をかけて土壌生物を抽出します。
室内には置かない方が良いでしょう・・・。
大型のミミズなどが装置の外に出てくることがあります。

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1週間放置してカラカラになった腐植です。
今回の試料は土(鉱物)の成分がほとんど入っていないので、
乾燥するとすごく軽くなりました。

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2号機の写真です。

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3号機の写真です。


腐植がカラカラに乾燥したら網やフルイを解体して、
プラスチック製の容器の水を観察します。

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昆虫の幼虫やミミズなど大型の生物は水底に沈んでいます。
大型のササラダニやトゲダニも水底に沈んでいることが多いですが、
肉眼では観察が難しく、実体顕微鏡があると便利です。
だいたい生きています。
今回はハエ・アブの幼虫が多かったです。

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トビムシや小型のササラダニは水面に浮かんでいることが多いです。
白いホコリのようなものや、赤い粒がトビムシです。
トビムシは1mmくらいの大きさなので注意すれば肉眼でも動いていることが分かります。

今回のサンプルではササラダニはあまり見つかりませんでした。
逆にトビムシやトゲダニが多く見つかりました。
今回撮影できたトビムシやトゲダニは次回の記事で紹介したいと思います。

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ちなみにこちらは秋田県で採取した腐植で、
今回の試料よりも分解が進んでいます。
この試料からはササラダニが多く見つかりました。
腐植の分解の程度によって土壌生物の種類も変わるようです。
自由研究のテーマに良いかもしれないですね。

2018年11月15日 (木)

カマアシムシ:秋田県男鹿半島(2018年8月採取)

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秋田県の男鹿半島でカマアシムシを採取しました。
カマアシムシは節足動物門 六脚上綱 内顎綱 カマアシムシ目に属しています。
3対の胸脚があるので昆虫に似ていますが、
共通しているのは六脚上綱までで昆虫(昆虫綱)ではありません。
トビムシ目とコムシ目とともに内顎綱を構成します。
内顎綱と昆虫は近縁で、無翅亜綱として昆虫綱に含まれていたときもあります。

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写真は100倍の画像です。
今回撮影した写真では確認できませんが、
腹部に3対の腹肢(付属肢)があります。
前脚(第1胸脚)を鎌のように折り曲げ、前方に突き出して触角の代わりに使います。
触角はありません。
目もありませんが、頭部背側面に1対の偽眼(感覚器)があります。

カマアシムシは1mm前後の小さな虫なので、
ほとんど目にすることはないと思いますが、
昆虫の系統進化を考える上では面白い虫です。


2018年7月17日 (火)

トゲダニ亜目 ホコダニ科 ヘラゲホコダニ属(Holaspulus属) 茨城県2018年1月

少し前のデータになりますが正月に採取したトゲダニの同定記録です。


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3月に書いたホコダニ属(Holaspina属) に似ていますが、
ホコダニ属よりも背毛が太いように見えます。
少し拡大しましょう。

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背中には背板と呼ばれる硬い殻があります。
背板の最前方にある毛がj1で、
その斜め下にある毛がz1です。

ホコダニ科にはz1を欠くものがいるので、
最初の同定に役に立ちます。
カマゲホコダニ属(Gamasholaspis属)、ホコダニモドキ属(Euparholaspulus属)、
はz1を欠くとされています(日本産土壌動物)。

ヘラゲホコダニ属(Holaspulus属)、コシビロホコダニ属(Naparholaspis属)、
ダルマホコダニ属(Proparholaspulus属)、ホコダニ属(Holaspina属)、
ヤリゲホコダニ属(Parholaspis属)
はj1とz1を持ちます。
写真の種はz1がないので、カマゲホコダニ属か、ホコダニモドキ属ということになります。

ただ、注意したいのが日本ダニ類図鑑や日本産土壌動物のイラストを見てみると
ヘラゲホコダニのz1は非常に短いようです。
なので、今回の種がヘラゲホコダニ属であった場合、
z1の存在に気がついていない可能性があります。

次に腹面から観察した画像です。

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腹肛板が生殖版と周気管板と融合しています。
この特徴はヘラゲホコダニ属またはコシビロホコダニ属に似ています。
ヘラゲホコダニ属とコシビロホコダニ属は鋏角固定背毛の形状が異なります。
ですので、次は鋏角の観察です。

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固定指背毛は毛束の反対側にあります。
毛束があるほうのハサミが動指、反対側が固定指です。
この倍率では観察が難しいので、もう少し拡大してみます。

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固定指背毛はやや曲がっていますが単純な形であることが分かります。
コシビロホコダニ属の固定背毛は楔型で変わった形なので、
コシビロホコダニ属の可能性は無さそうです。

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念のために他の個体の鋏角も観察してみます。
こちらのほうが固定指背毛が観察しやすいです。
矢印の先の固定脂背毛は少し曲がった単純毛です。
ここまで来れば、この種はヘラゲホコダニ属と考えて良いでしょう・・・ふう。

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こちらは何の部分か分かりにくいですが顎体突起です。
ホコダニのなかまは顎体突起にも特徴が出るのですが、
ヘラゲホコダニ属はあまり特徴がありません。
ギザギザしていて、中央に長い突起がないことが特徴です。

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こちらは気門です。
周気管の後端部はまっすぐで湾曲しません。
ハエダニ科は周気管の後端部が湾曲しているので、
この部分を見ればハエダニ科とホコダニ科を識別できます。

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後胸板です。
ここも見ておいたほうが良い部分です。

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最後に背毛の拡大画像です。
確かにヘラのような形です。
ヘラ毛ホコダニですね。

2018年6月16日 (土)

KAWAII系の生物(マルトビムシ亜目)

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前回の線虫がアレ系な生物だったので、
KAWAII系の生物を上げておきます。
マルトビムシ亜目の1種です。
うさぎさんみたいで可愛いですよね!?
脚が3対有りますが、それも萌ポイントですよね。

マルトビムシ亜目はかなり大きな分類群なので、
詳細な分類はできていません。
ミジントビムシ亜目と似ていますが、
触覚が頭の長さより長いことから区別できます。

正月に茨城県で採取したものです。
マルトビムシは小さいので肉眼で識別できるかどうか、
実体顕微鏡がお勧めです。

2018年6月 2日 (土)

ふなばし三番瀬海浜公園の線虫

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ふなばし三番瀬海浜公園で採取した線虫(センチュウ)です。
細かな分類はさっぱり分かりませんが、
線形動物門 線虫綱に属していると思われます。
干潟の泥のなかで生活しているようです。
甲殻類のサンプルに線虫がたくさん混入していたので、
干潟には大量に生息しているのかもしれません。

なんだか寄生虫に似ていますが、
それもそのはずでギョウチュウや回虫、アニサキスも
線形動物門のなかまです。

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今回撮影した線虫は卵を持っていました。
右下方向に7個の楕円形の卵があります。
ちなみに右上の先端が頭です。

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頭の拡大画像です。
種類によっては口壁の内壁に歯があったり、
口針があるようですが、よく分かりませんでした。
口から左側に向かって食道が伸びています。

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食道と腸の境界付近です。
ここには食道腸間弁という構造があるそうです。
(参考:日本産土壌動物)

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卵の拡大画像です。

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尾部の拡大画像です。
肛門は先端部から少し離れたところに開口しています。
先端には尾腺口があるそうです。

こんどは土壌中の線虫も観察しようと思います。

2018年4月15日 (日)

カニムシ(同定中2019年2月現在) 茨城県2018年1月

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“カニムシ”という生き物を知っていますか?
大きな鋏を持っていることが特徴です。
サソリに似た形でインパクトがありますが、
大きくても1cm以下なので見たことがある人は少ないと思います。

サソリとの違いは長い後腹部を持たないことです。
サソリの“しっぽ”を切り離したような形に似ています。

今回は今年の正月に茨城県で採取した
キタツチカニムシ(Allochthonius borealis )と思われる
カニムシを紹介します。

群馬県で同じ種類と思われるカニムシを見つけたのですが、キタツチカニムシではない可能性が出てきました。基節棘の特徴以外はツチカニムシ科に似ています。そもそも基節棘の見方を誤っているかもしれません。

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今回採取したカニムシは体長1.5mm、鋏角も加えた体長は1.8mmです。
日本産土壌動物によればキタツチカニムシの体長は1.7~2.4mmですので、
やや小型の個体と言うことになります。

*本種がキタツチカニムシなのか再検討中(2019年2月)

眼(単眼)は体の側面にあります。
単眼は2対、4個有ります。

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側面から見た画像です。
眼は側面からのほうが分かりやすいです。
大きなザリガニのような鋏は蝕肢、眼の少し前方にもう一つの鋏“鋏角”を持ちます。

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蝕肢の拡大画像です。
蝕肢は動指と固定指でできています。
キタツチカニムシ(Allochthonius borealis )は動指の先端付近にだけ
ギザギザの歯が並んでいます。

*本種がキタツチカニムシなのか再検討中(2019年2月)

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別の角度から。
固定指は先端から根元までギザギザの歯が並んでいますが、
動指の歯は中間部よりも先端方向にだけ並んでいます。
ここは近縁種のオウギツチカニムシ(Allochthonius opticus)との
重要な識別ポイントなので念入りに観察します。

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次に腹面からも観察します。
ツチカニムシ上科の歩脚は前2対が6節、
後ろ2対が7節です。
ヤドリカニムシ科は全歩脚が6節、コケカニムシ科などは
全歩脚が7節なので、ここも分類の重要なポイントです。

今回のキタッチカニムシはツチカニムシ上科 オウギツチカニムシ科
(Pseudotyrannochthoniidae)に属しているので、
前2対の歩脚は6節、後ろ2対の歩脚は7節です。
ただ、後ろ2対の歩脚の節の数え方は難しいので後で念入りに見てみます。

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腹面の構造を少し詳しく観察します。
体の最も前方にある鋏は鋏角です。

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鋏角の拡大画像です。
蝕肢と間違えやすいので注意が必要です。
鋏角はクモ、ダニ、サソリ、ザトウムシ、カブトガニなどが持つ共通の口器で、
鋏角を持つ生物をまとめて鋏角亜門と呼びます。
カニムシの鋏角は、鋏顎とも呼ばれます。

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次に歩脚の基節部分を観察します。
第1歩脚に棘があります。
これは基節棘と思われます。
ケブカツチカニムシ科は基節棘が第1,第2歩脚にあり、
オウギトゲツチカニムシ科は基節棘が第1歩脚にあり、
ツチカニムシ科は第2歩脚にあるので、
基節棘の位置はツチカニムシ上科の科レベルの分類に重要です。

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では歩脚の後ろ2対の節を数えてみます。
この倍率では難しいですね。

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まず根元から、1節目と2節目の境界(1/2)、
2節目と3節目の境界(2/3)、3節目と4節目の境界(3/4)を見ていきます。
3節目と4節目の境界には明瞭なくびれが無いので見逃してしまいそうです。

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次に4節目と5節目の境界(4/5)、5節目と6節目の境界(5/6)、
6節目と7節目の境界(6/7)を見てみます。
一応、6節目と7節目の境界(6/7)を確認できたので、
節の数は7節と分かりました。
本当は解剖して脚を切り離した方が変わりやすいかも知れないですね。

2018年3月18日 (日)

トゲダニ亜目 ホコダニ科 ホコダニ属(Holaspina属) 茨城県2018年1月

今週はトゲダニのなかまです。
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このダニも今年の正月に茨城県で採取しました。
土壌中のトゲダニは主にセンチュウやトビムシを補食しています。
ハエの卵や幼虫、他のダニを補食するものもいるそうですが、
基本的に人間生活とは無関係な生物です。

トゲダニはどれも黄色や茶褐色で外見上は良く似ています。
トゲダニだ、ということはすぐ分かるのですが、
それ以上の分類はなかなか簡単ではありません。
写真のダニは外見上、ホコダニ科に似ているので、
ホコダニ科にあたりをつけて同定を進めていきます。
分類には“日本産土壌動物 分類のための図解検索 【第2版】 青木淳一編著”
を使用しました。

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背面を拡大した画像です。
背中には背板と呼ばれる硬い殻があります。
背板の最前方にある毛がj1で、
その斜め下にある毛がz1です。

ホコダニ科にはz1を欠くものがいるので、
最初の同定に役に立ちます。
カマゲホコダニ属(Gamasholaspis属)、ホコダニモドキ属(Euparholaspulus属)、
はz1を欠くとされています(日本産土壌動物)。

ヘラゲホコダニ属(Holaspulus属)、コシビロホコダニ属(Naparholaspis属)、
ダルマホコダニ属(Proparholaspulus属)、ホコダニ属(Holaspina属)、
ヤリゲホコダニ属(Parholaspis属)
はj1とz1を持ちます。
写真の種はz1があるので、カマゲホコダニ属と
ホコダニモドキ属は除外できます。

ただ、z1は非常に弱く、
脚などを整える過程で倒れてしまったりして、
見えなくなってしまいます。
なので、最近は脚などを整える前にj1、z1を撮影しています。

以前の記事の“ホコダニ科(Parholaspididae) カマゲホコダニ属?2017年3月焼津市”
のホコダニはz1が見えないためにカマゲホコダニ属?としていますが、
実はz1が倒れてしまっていたために
別の属と誤認している可能性があります。
今回は慎重に行きましょう。

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次は腹面を観察します。
腹側には腹肛板、生殖板、胸板の3枚の板があります。

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写真に板の名前を書き込みました。
わかりますか?
トゲダニの分類では、この3つの板が融合しているか、
あるいは分離しているかが非常に大事です。
写真の種は腹肛板、生殖板、胸板が分離しています。
さらに言えば、この3つの板の両脇にある周気管板とも分離しています。
この特徴を持つのはホコダニ属(Holaspina属)と
ヤリゲホコダニ属(Parholaspis属)です。

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生殖板を中心に拡大した画像です。
右側が胸板、左側が腹肛板になります。
胸板と生殖板の間には後胸板と呼ばれる小さな板があります。

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後胸板です。
直径10μm以下ですね。
低倍率では確認が難しいかも知れません。
ホコダニモドキ属(Euparholaspulus属)は後胸板を持たないそうです
(日本産土壌動物)。

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こんどは腹面の側面を観察します。
大きな丸い構造は脚の付け根です。
右から第2脚、第3脚、第4脚です。
第3脚、第4脚の間の側面に気門があります。
ホコダニ科の気門は単純な円形です。

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気門の拡大画像です。
気門の構造も重要な情報です。

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次に鋏角です。
鋏角は動く“可動指”と動かない“固定指”でできています。
可動指の付け根に毛束と呼ばれる構造があります。
ホコダニ科の毛束は羽毛状です。
羽毛状の毛束を持つのはホコダニ科とハエダニ科ですが、
ハエダニ科は湾曲した気門を持つので、
気門を見ればホコダニ科とハエダニ科を区別できます。

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こんどは顎体突起です。
トゲダニの頭部というか、口器の付け根というか、
説明が難しい部分です。
はじめは顎体突起がどこのことなのか分からず苦労しました。
写真を撮っても分かりにくいのですが、
トゲダニ類の分類にとっては重要な部分です。

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分かりにくいので別の個体で再撮影しました。
矢印の部分に3つの突起があります。

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拡大して撮影した画像です。
焦点深度が浅くなったので逆に分かりやすくなったかもしれません。
さきほど、腹肛板、生殖板、胸板の形状から、
ホコダニ属(Holaspina属)とヤリゲホコダニ属(Parholaspis属)に絞りましたが、
3つの突起を持つのはホコダニ属で、
ヤリゲホコダニ属は中央の突起だけです。
この時点で、今回のトゲダニはホコダニ属(Holaspina属)と同定できたと思います。
種レベルの同定はさらに難易度が高いので、
今回は属レベルに留めておきます。

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こちらは分類にはあまり関係がないようですが、
腹面の前方にある叉条突起と呼ばれる突起です。

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これは背毛の拡大画像です。
ホコダニ属の背毛は単純な構造です。
ヤリゲホコダニ属(Parholaspis属)は槍状毛、
ヘラゲホコダニ属(Holaspulus属)はヘラ型の背毛を持ちます。

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こちらも背毛の拡大画像です。

以前の記事のホコダニ科もホコダニ属(Holaspina属)の可能性が高そうですね。

2017年4月 9日 (日)

イレコダニ科とタテイレコダニ科とヘソイレコダニ科

今回も焼津市のダニの話題です。
ササラダニを採取できたことは前に書きましたが、
紛らわしい名前の種類をまとめて採取できたので
ダニ初心者にとっては非常に助かりました。

なかでも、紛らわしい、というかややこしいのは
イレコダニの仲間です。

今回見つかったのは、
イレコダニ科(Phthiracaridae)と
タテイレコダニ科(Oribotritiidae)と、
ヘソイレコダニ科(Euphthiracaridae)です。

これらのササラダニに共通するのは、
体を丸めることができること。
脚も引っ込めることができます。
前回のフリソデダニと同じく、
捕食者からの防御に関係しているのでしょう。

さて、順に見ていきます。
まず側面から見た全体像です。

イレコダニ科(Phthiracaridae)です。
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左側が前体部、右側が後体部です。

こちらも、イレコダニ科(Phthiracaridae)です。
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前体部と後体部の間に脚があります。
防御時には前体部を折り曲げて、蓋のように閉じて
丸くなります。

タテイレコダニ科(Oribotritiidae)です。
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右側が前体部、左側が後体部です。
なんだか名前だけでなく、形もイレコダニ科に似ていますね。

こんどはヘソイレコダニ科(Euphthiracaridae)です。
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側面からではイレコダニ科と区別できません。

こちらもヘソイレコダニ科(Euphthiracaridae)です。
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上のヘソイレコダニと違うように見えますが、
これもヘソイレコダニ科です。
脚を伸ばしている状態です。

このように側面からでは、はっきり言って区別できません。

では、今度は腹面を見てみましょう。
まずイレコダニ科(Phthiracaridae)です。

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田の字のような構造があります。
これは性肛門域(性殖門と肛門)で、
イレコダニ科の性肛門域は田の字になることが特徴です。

こちらは2番目のイレコダニ科(Phthiracaridae)の腹面です。
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上の写真と同じく、性肛門域が田の字になっています。

今度はタテイレコダニ科(Oribotritiidae)です。
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基本的には田の字型なのですが、
細長く伸びています。

ヘソイレコダニ科(Euphthiracaridae)です。
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田の字型の構造が無く、
性肛門域の中央に小さな三角形の構造があります。
ヘソイレコダニの“へそ”ですね。

2番目のヘソイレコダニも見てみます。
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やはり“へそ”があります。
側面からの形は違っていても同じヘソイレコダニということがわかります。

今回も日本産土壌動物を参考にしました。
イレコダニグループには他にもフシイレコダニ科や、
ニセイレコダニ科がいるそうです。
いつか、他のイレコダニも見てみたいですね。

2017年4月 1日 (土)

フリソデダニとフリソデダニモドキ

今回も焼津市で採取したダニの話題です。
焼津市では、たくさんのササラダニを採取できました。
そのなかの、フリソデダニ(Galumnidae)と
似た名前のフリソデダニモドキ(Galumnellidae)を紹介します。

まずフリソデダニです。
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正確にはフリソデダニ科(Galumnidae)の不明種です。
日本産土壌動物によればフリソデダニ科は世界で30属以上、
400種以上含む大きな科なので詳細な分類は難しいです。

形態的な特徴は、体の両側に翼状突起があること。
フリソデダニの名前の由来は“この翼状突起を振り袖に見立てた”
とのことです。

この翼状突起は可動式で、驚いたときなどに、
翼状突起の内側に脚を引っ込めて丸くなることができます。
島野 智之氏の書籍“ダニマニア”によれば、
ササラダニは堅い殻を持っているものの、
脚などの関節部分がウィークポイントなので隠す必要があるとのことです。
土壌生物の生存競争もなかなか厳しそうです。

ついでにフリソデダニの裏側です。
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ちょっと分かりにくいですね。

次はフリソデダニモドキです。
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前の写真のフリソデダニよりも立派な翼状突起を持っています。
日本産土壌動物によれば、特徴は、

“フリソデダニ科よりも前体部の幅が狭く、後体部の幅が広い”こと。

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こちらのほうが形が分かりやすいでしょうか。
なんとなく富士山型をしています。
フリソデダニは丸い感じですが、
フリソデダニモドキは多角形な感じがしますね。


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こちらの写真は表面に焦点を合わせて撮影した画像です。
フリソデダニもフリソデダニモドキも光を通さないし、
光を当てても黒いので、写真に写すのが難しいです。
通常の暗視野照明の他に、横方向から照明で照らして観察しました。

さて、上の写真では殻の中央部に編目模様があります。
この形状は日本産土壌動物のフリソデダニモドキ
Galumnella nipponica)に似ています。
日本には他にオキナワフリソデダニモドキも分布しますが、
大きさと編目模様の形状が異なります。
今回の種はフリソデダニモドキ(Galumnella nipponica)としてよさそうです。

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上の2枚はフリソデダニモドキを裏側から見た画像です。
裏側からの方が翼状突起が分かりやすいかもしれないですね。