ヨコエビ画像集の更新案内7 メリタヨコエビ科 Melitidae Bousfield, 1973
忘れたころにヨコエビ画像集の更新案内です。
今回はメリタヨコエビです。
日本海岸動物図鑑[II]によれば、メリタヨコエビ科(Melitidae)は世界で69属が知られています。
日本からは10属が知られています。主要属はイソヨコエビ属(Elamopus)、スンナリヨコエビ属(Maera)、
メリタヨコエビ属(Melita)、ヤシャヒメヨコエビ属(Abludomelita)です。
これらの属を見分けるためには第3尾肢を詳細に観察する必要があります。
イソヨコエビ属の第3尾肢の2本の枝は同じ長さで短く、
スンナリヨコエビ属の第3尾肢の2本の枝は同じ長さで長く、
メリタヨコエビ属の第3尾肢は内肢は鱗状で外肢は長く1節、
ヤシャヒメヨコエビ属の第3尾肢は鱗状で外肢は長く2節(先端節は小さい)などの違いがあります。
宮城県の万石浦で採取したヒゲツノメリタヨコエビ (Melita setiflagella)です。
ヒゲツノメリタヨコエビ(Melita setiflagella)は大きな川の河口付近や、
沿岸汽水域の貝殻の内側などで見つかります。
第1触角の副鞭は3節。第2触角鞭部に長い棘が密生します。
東京湾の多摩川河口干潟と葛西海浜公園でも採取しています。
伊豆大島で採取したナガタメリタヨコエビ(Melita nagatai)です。
ナガタメリタヨコエビ(Melita nagatai)は下記の特徴を持ちます。
副鞭は3節、雄の第1咬脚の下縁が三角形に突出、雌の第1咬脚の
指節は掌縁よりも短い、雌の第6底節板に段差がある、
第3腹側板の後縁の角に小さな歯状突起がある。
ナガタメリタヨコエビ(Melita nagatai)は干潟の他、磯の転石の下からも見つかります。
宮城県の万石浦と秋田県男鹿半島でも採取しています。
宮城県の万石浦で採取したシミズメリタヨコエビ(Melita shimizui)です。
シミズメリタヨコエビ(Melita shimizui)は下記の特徴を持ちます。
副鞭は1節、雄の第1咬脚の下縁が四角形に突出、雌の第6底節板に段差がある、
第3腹側板の後縁の角に小さな歯状突起がある。
シミズメリタヨコエビは干潟などで見つかります。
東京湾の三番瀬干潟でも採取しています。
北海道積丹町で採取したヤシャヒメヨコエビ属(Abludomekita sp.)です。
ヤシャヒメヨコエビ属の第3尾肢の内枝は鱗状、外枝は長く2節で、外枝の先端節が小さいことが特徴です。
日本海岸動物図鑑[II]によれば、メリタヨコエビ属とヤシャヒメヨコエビ属はよく似ていているので
近い将来に再統合される可能性があるとのことです。
神奈川県三浦市で採取したスンナリヨコエビ(Maera sp.)です。
日本海岸動物図鑑[II]によれば、(1)第2咬脚が大きく長方形で、掌部が後縁に対し直行する、
(2)後端歯が他よりも大きい、などの特徴を持っています。
昨年、伊豆半島の下田近辺でも採取しました。
相模湾に広く分布しているかもしれません。
茨城県ひたちなか市で採取したイソヨコエビ(Elasmopus cf. japonicus)です。
イソヨコエビ(Elasmopus japonicus)は体長14mm、第1触角の副鞭は4節で先端節は小さい、
雄の第2咬脚は前節が肥大化、掌部は縦走、長毛が密生し先端部に半円形を描く棘列がある、
尾節板は基部近くまで切れ込む、などの特徴を持ちます。
本州以南の岩礁帯に生息するそうです。
また、Elasmopus 属には数種の未報告種があるとのことであり、
ここで記載する種もイソヨコエビ(Elasmopus japonicus)ではなく、
Elasmopus 属の未報告種である可能性があります。
ここで記載する種の第1触角の副鞭は1節であり、
日本海岸動物図鑑によるイソヨコエビ(Elasmopus japonicus)の記載と異なります。
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初めてコメント致します。ウミミズムシを採取したいのですが、海のどの辺を探せば採取できるのか教えていただければ幸いです。今海水水槽をやっており、ヨコエビより動きが緩慢で、ガラス面の珪藻も食べてくれるウミミズムシを入れたいと思っています。
投稿: 名護 | 2020年9月29日 (火) 23時06分
ウミミズムシは磯で見つかります。ただ、あまり多くは見つからないようです。夜行性なのか、夜間の干潮時にタイドプールの海藻をガサガサしたときに一番多く採取できました。
投稿: ねこのしっぽラボ | 2020年10月 3日 (土) 00時20分
情報助かります。ありがとうございます。
投稿: 名護 | 2020年10月 4日 (日) 00時12分
ちなみにドロクダムシも似たような場所で採取できますでしょうか?お時間のある時にでも教えて下さい。
投稿: 名護 | 2020年10月 6日 (火) 00時31分
ドロクダムシは波が穏やかな内湾や干潟で見つかることが多いです。
泥の中(表層)に生息しています。水底の泥をシャーレになどに入れて注意深く観察すると見つかると思います。泥が堆積しない磯などではあまり見られません。
投稿: ねこのしっぽラボ | 2020年10月 6日 (火) 01時10分
ありがとうございます。探してみます。
投稿: 名護 | 2020年10月 6日 (火) 21時57分