ヨコエビ画像集の更新案内5 アゴナガヨコエビ科 Pontogeneiidae Stebbing, 1906
GWも終わりですね。
緊急事態宣言の延長に『まどマギ』第3話と同じくらいの衝撃を受けましたが、
今回も代表的なヨコエビを紹介していきます。
アゴナガヨコエビ科(Pontogeneiidae)は世界に4属、
日本からはアゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata Gurjanova, 1938)
だけが知られています(日本海岸動物図鑑II)。
ただ、茨城県の沿岸ではアゴナガヨコエビ科が複数種見つかっていますし、
日本海岸動物図鑑にも形態的によく似た未記録種が日本の海岸に多数分布するとの記述があります。
日本海岸動物図鑑自体、1980年代の知見なので現在は日本から複数種記載されている可能性があります。
代表種のアゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata Gurjanova, 1938)の
尾節板は基部の幅の約1.5倍で、先端から約2/3で双葉となり、その先端は幅広く広がります。
一方で、形態的にはアゴナガヨコエビ科に似ていながらも、
尾節板が単葉の種類が宮城県から見つかっていて、海外の情報を含む文献調査が必要になっています。
アゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)の雄と思われる個体です。
Pontogeneia rostrata type 1としていますが、type1は触角柄部に鱗状の突起が有り、
第3胸脚と第4胸脚に長い棘があることが特徴です。
抱卵した個体がいないことからtype 1は雄の個体群と思われます。
日本海岸動物図鑑によれば、アゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)は体長8mm、
第1触角は第2触角よりも短く、副鞭を欠き、第3柄節の下縁先端に鱗状の突起があります。
第1胸脚、第2胸脚は小さく同型で腕節と前節は同じ長さ。第2、第3側板の後縁下部に1鈍歯があります。
尾節板の長さは基部幅の約1.5倍。先端から2/3で双葉になります。
こちらもアゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)の雄と思われる個体です。
地域ごとに体色は少し異なりますが、
基本的には透明で眼の後方に紫色の斑点があります。
アゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)の雌(type2)は第2触角の柄部に
淡い青色の模様があることが特徴ですが、
宮城県の個体群は雄でも第2触角の柄部に淡い青色の模様があります。
アゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)の雌と思われる個体です。
便宜的にType2としていますが、type2は触角柄部に鱗状の突起が無く、
第3胸脚と第4胸脚の長い棘を欠き、第2触角の柄部に青色の模様があることが特徴です。
これら以外はtypa1に酷似します。
抱卵した個体が見られることから、type 2は雌の個体群と判断しています。
Type1と同様に眼の後ろに紫色の模様がありますが、
大型個体は体表面に茶色の模様が生じることが多いです。
この個体(type3)もアゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)と思われるのですが、
第1、第2触角に長い棘があることが大きな特徴です。
他にも体表面の体節に茶色の縞模様がある、などの特徴を持ちます。
type 3は雌個体を含みます。
今年の正月に茨城県で追加個体の採取ができたので、
解剖してType1とType2との比較を行っているところです。
ただし、これらのタイプの間で尾節板と第3尾肢の形態に大きな違いは無さそうです。
Pontogeneia rostrataに近縁な別種の可能性はあると思います。
便宜的にPontogeneia sp.8としている種です。
第1触角と第2触角の長さは同程度、体表面に模様はありません。
触角には長いトゲがあります。
緑色の卵を持っていました。
先日のブログでも紹介していますが、
第3尾肢のトゲの長さと、尾節板の形状が明らかにPontogeneia rostrataと異なります。
(もっとも、こちらの種が本当のPontogeneia rostrataである可能性もあります)
Pontogeneia rostrataに次いで良く見つかる種です。
茨城県ひたちなか市、東京都伊豆大島、千葉県南房総市で採取したので
本州南岸に分布する種かもしれません。
日本未記載種の可能性があるので、専門家の方、宜しくお願います。
便宜的にPontogeneia sp.9としている種です。
Pontogeneia sp.8と同じく第1触角と第2触角の長さは同程度、体表面に模様はなく、
第1、第2触角の柄部に長い棘があります。
基本的にはPontogeneia sp.8とよく似ているのですが、
体表面の模様が異なります。
この種を採取したときに解剖を行っていないので第3尾肢、尾節板の情報はありません。
(尾節板の解剖ができるようになったのはここ最近です)
ただ、この種は静岡県の美保半島の先端付近の東海大学近くの
テトラポット隙間の潮だまりに群れを作って泳いでいたので
必要であれば簡単に採取はできそうです。
便宜的にPontogeneia sp.10としている種です。
宮城県の牡鹿半島で採取しました。
ただ、Pontogeneia属ではない可能性が高いです。
第1触角第3柄節の副鞭がある位置に鱗状の突起が有り、第1、第2胸脚は同型で、第3尾肢は双枝、
尾節板は楕円形、体色はオレンジ色などの特徴を持ちます。
第1触角の鱗状の突起はアゴナガヨコエビににていますが、
尾節板に切れ込みがないのでアゴナガヨコエビとは明確に区別できます。
尾節板の形状の違いは属レベルの違いであることが多いので、
アゴナガヨコエビ科の別属の可能性があります。
もっとも、アゴナガヨコエビ科かどうかも怪しいです。
もしかすると北海道の紋別市で採取したPontogeneia sp.3も、この種と近縁かもしれません。
Pontogeneia sp.3もsp.10と同じく第1触覚柄部の第3柄節に鱗状の突起があります。
これらの種は北方系の分類群かもしれません。
アゴナガヨコエビのデータベースはごちゃごちゃしているので、
次回更新までに再検討する予定です。
Pontogeneia sp.3とsp.10はアゴナガヨコエビ科の不明属に移す必要があるかもしれません。
いずれにせよ、日本産のアゴナガヨコエビ科が1属1種と言うことはないと思います。
嘘だといってよ、バーニィ
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