ヨコエビ画像集の更新案内1 ヒゲナガヨコエビ科(Ampithoidae Stebbing, 1899)
ようやくヨコエビ画像集の更新が完了しました。
これで2020年版の甲殻類の図鑑が完成です。
甲殻類の図鑑はこれまで“画像集”としていました。
深い意味は無いのですが、
図鑑と名乗るにはそれなりの完成度が必要かな、との判断です。
ヨコエビ画像集は少し不完全なところがあるので、
ヨコエビ図鑑と名乗るのは次回以降になりそうです。
さて、ヨコエビのデータがまとまったところで、
代表的なヨコエビを紹介していきます。
まずは、ヒゲナガヨコエビ科(Ampithoidae Stebbing, 1899)です。
ヒゲナガヨコエビ科は世界から14属、日本からは3属が知られています。
海藻に巣を作り生息しています。
第2咬脚の性差が大きく、雄では種の特徴が現れますが、雌は種の判別が困難です。
第3尾肢の外枝先端に1対鉤状棘を持ちます。
主要属はヒゲナガヨコエビ属(Ampithoe sp.)とイッケヒゲナガヨコエビ属(Peramphithoe sp.)です。
こちらは男鹿半島で採取したニッポンモバヨコエビ(Ampithoe lacertosa)と思われるヨコエビです。
ニッポンモバヨコエビは第1触角の基部に棘状の剛毛があること、
第3腹側板の後端が尖ること第5底節板の後縁に剛毛束があることなどが特徴です。
第5底節板の後縁の剛毛束を確認できていないので同定は確実ではありません。
ニッポンモバヨコエビは普通種のはずなのですが、
以外に典型的な個体が見つかりません。
こちらは新潟県で採取したモズミヨコエビ(Ampithoe valida)です。
モズミヨコエビは第2~4底節板の下縁に数本の棘があることや、
第2咬脚の前節(先端から2番目の節)の掌部に長方形の突起があることが特徴です。
こちらは東京湾の三判瀬で2018年4月に採取したモズミヨコエビです。
モズヨコエビは海岸で最も普通に見られるヒゲナガヨコエビで、
干潟の他、タイドプールなどでもよく見られます。
潮の干満などによる環境の変化に強いのかもしれません。
静岡県で採取したフサゲヒゲナガ(Ampithoe zachsi)と思われる個体です。
フサゲヒゲナガ(Ampithoe zachsi)は第2触角に多数の毛状の棘があることが特徴です。
棘は毛束の列を作ります。
毛束の列は第2触角の柄部だけでなく鞭部にも続きます。
記載論文を見つけていないので同定が確実ではありません。
新潟県で採取したフサゲヒゲナガ(Ampithoe zachsi)と思われる個体です。
静岡の個体群は第2胸脚の前節掌部に台形の突起がありました。
一方、新潟県糸魚川市の個体は第2胸脚の前節掌部に突起がありません。
同じ種類なのか、あるいは未成熟個体なのか、
そもそもフサゲヒゲナガなのか判断ができていません。
秋田県で採取したAmpithoe tarasovi です。
Ampithoe tarasovi は毛状の長い棘を持つ幅広の第1胸脚を持つことが特徴です。
第2胸脚に対して第1胸脚は大きく目立ちます。
第2胸脚は掌部に長方形の突起を持ちますが、
モズミヨコエビ(Ampithoe valida)ほど顕著ではありません。
文献も多くはなく、出現は比較的希なようです。
ロシア、日本、韓国で記載されています。
日本海を中心に生息していると思われます。
今回はここまでです。
次回はユンボソコエビ科 Aoridae Stebbing, 1899です。
« ハルパクチクス目の不明種:2019年3月 伊豆 | トップページ | ヨコエビ画像集の更新案内2 ユンボソコエビ科 Aoridae Stebbing, 1899 »
「ヨコエビの同定記録」カテゴリの記事
- ヨコエビ画像集の更新案内7 メリタヨコエビ科 Melitidae Bousfield, 1973(2020.07.23)
- ヨコエビ画像集の更新案内6 タテソコエビ科 Stenothoidae Boeck, 1871(2020.06.20)
- ヨコエビ画像集の更新案内5 アゴナガヨコエビ科 Pontogeneiidae Stebbing, 1906(2020.05.06)
- ヨコエビ画像集の更新案内4 カマキリヨコエビ科 Ischyroceridae Stebbing, 1899(2020.05.03)
- ヨコエビ画像集の更新案内3 ドロクダムシ科 Corophiidae Leach, 1814(2020.05.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント