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2019年4月21日 (日)

アサガオケンミジンコ(Mesocyclops leuckarti):一碧湖 2019年3月

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3月に伊豆半島の一碧湖で採取したケンミジンコです。
解剖を行った結果、
アサガオケンミジンコ(Mesocyclops leuckarti)と同定しました。

ケンミジンコは科レベルでの同定は容易なのですが、
属・種レベルでの同定は難易度が高いです。
というのも種レベルの同定には第4脚、第5脚や
受精嚢(貯精嚢)の拡大観察が必要なのですが、
これらの観察には解剖が必要なのです。

具体的には第4胸節と第5胸節の間くらいでケンミジンコを切断し、
第4脚を全体部から分離すればよいだけなのですが、
ケンミジンコ自体が1mm程度の生物なので実体顕微鏡下での解剖が必須です。

技術的には一般的なヨコエビの解剖よりも難易度が高く、
ダニの解剖よりは容易です。

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ケンミジンコは生きている状態での撮影も難しいです。
動きが速いのでフォーカスや位置合わせを行っている間に
どこかに行ってしまいます。
動きを封じるために水の量を少なくすると写真のように横向きになってしまいます。

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こちらは原面から見た画像です。
側面や腹面からケンミジンコを観察すると脚が発達していることがわかります。
この脚を一気に動かして水中をダッシュします。
ピペットで吸い込もうとしても水流に逆らって逃げてしまいます。
ただ、捕まえる方法は意外に単純で、
ケンミジンコが入っているビーカーの水を少しずつ抜いていくと、
水がほとんどなくなって自由に動けなくなるまでビーカーに留まるので
その状態でピペットに吸い込みます。
ケンミジンコの脚力か人間の知恵か、みたいな勝負です。

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さて、こちらは解剖後の結果です。
太い部分は腹部、二股になっている場所は尾叉と呼ばれます。
腹部には幾つかの節がありますが、その中でもっとも長い節は
生殖複合節と呼ばれます。
ここには受精嚢(貯精嚢)があります。

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受精嚢(貯精嚢)の拡大像です。
といっても、この写真ではどこが受精嚢か分からないですね・・・。
写真中央あたりに多角形の構造が多数集まった場所がありますが、
そこが受精嚢で、その輪郭をよく見るとアサガオの葉の形をしています。
つまり、受精嚢の形がアサガオの葉に似ているので
『アサガオケンミジンコ』の名前が付いたわけですね。

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受精嚢よりも頭部側に第5胸節があります。
ここには第5脚があります。
写真は第5脚ですが、非常に貧弱です。
ただ、第5脚は種による違いが大きいので分類的には重要です。
日本淡水プランクトン図鑑のイラストと比較したところ、
羽毛状の棘が見難いもののアサガオケンミジンコとして
矛盾しないことがわかりました。

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こちらは第4脚です。
甲殻類の脚は二肢型といって2本セット
(内肢と外肢)になっているのが基本なので、
左右合わせて4本あります。
第4脚は左右の脚の間の第4脚連結板と、
内肢の先端の末節を観察します。

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第4脚連結板の拡大画像です。
たしか、左右の肢を連動させるための構造と聞いた覚えがあります。
ここも種による違いが大きいそうです。
一応、日本淡水プランクトン図鑑のイラストと同じような形でした。

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こちらは第4脚内肢末節です。
こちらも日本淡水プランクトン図鑑のイラストと同じような形でした。

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さて、最後に唐突ですが、第1触角の先端部です。
今までの解剖と全く関係ないですが、
アサガオケンミジンコ(Mesocyclops leuckarti)の場合、
ここに特徴があります。

すごく不明瞭な写真で申し訳ないのですが、
第1触覚の先端には薄い膜状の構造があり、
一部に半月型の切れ込みがあります。
この構造はアサガオケンミジンコ(Mesocyclops leuckarti)の特徴です。

結局、第1触覚を最初に見ておけばアサガオケンミジンコと
同定できるじゃないか、という話なのですが、
それであっても解剖して確認しなければならないのが分類学なんですよね。
とはいえ、アサガオケンミジンコかな?と思ったら
まずは第1触覚を観察すればよいのかな、と思いました。

 

 

 

 

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