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2017年11月17日 (金)

シャジクモ(Chara sp.)の観察


シャジクモは普通の水草(被子植物)に見えますが、
シダ、裸子植物、被子植物に見られるような維管束はなく、
花も咲かせません。
陸上植物に比べるとはるかに単純な構造ですが、
藻類のなかでは際だって複雑な構造を持っています。

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茎のように見える構造は主軸で、
節と節の間は節間細胞と呼ばれる非常に長い細胞でできています。
節の部分からは小枝が生じます。
小枝は節の部分から放射状に生じるので、
節から生じる小枝をまとめて輪生枝と呼びます。

上の写真の左側はシャジクモの上部の部分、
右側は付け根の部分です。

シャジクモ目(Charales)、シャジクモ科(Characeae)の代表的な属は
シャジクモ属(Chara)とフラスコモ属(Nitella)ですが、
シャジクモ属は小枝が分岐せず、フラスコモ属は分岐するといった違いがあります。
写真の種はシャジクモ属(Chara sp.)です。
石田精華園さんで購入した田土から発生しました。

直射日光を避けた明るい窓辺の瓶と、ベランダの水槽で栽培しました。

上側の部分を拡大してみます。

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オレンジ、または褐色の果物の実のような構造がありますが、
これはシャジクモの生殖器です。
シャジクモの生殖器は藻類のなかでも最も複雑なもので、
雄性生殖器官と雌性生殖器官の区別があり、
どちらも多細胞でできています。

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これは雄性生殖器官と雌性生殖器官を拡大したものです。
生殖器は節に近い部分の小枝にリング状に生じます。
雌性生殖器官が上側、雄性生殖器官が下側にあります。
シャジクモ属(Chara)は雌性生殖器官が上側、雄性生殖器官ですが、
フラスコモ属(Nitella)は雌性生殖器官が下側、雄性生殖器官が上側に付きます。

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シャジクモ本体から切り離して、詳細に観察した画像です。
少しずつ焦点を変えて撮影した画像です。
上側のオレンジ色の部分が雌性生殖器官(生卵器)です。
雌性生殖器官には卵が入っていて、受精後に卵胞子(接合子)になります。
卵胞子は螺旋状の管細胞に覆われています。

雌性生殖器官の頂点には冠細胞があります。
シャジクモ亜科(シャジクモ属、シラタマモ属、ホシツリモ属)の冠細胞は5個、
フラスコモ亜科(フラスコモ属)では10個有ります。
不明瞭ですが、写真の種(シャジクモ属(Chara sp.))の冠細胞は5個です。

下側の赤い球形の部分は雄性生殖器官(造精器)です。
雄性生殖器官(造精器)は楯細胞、柄細胞、造精糸が球形の構造を作っています。

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こちらは雌性生殖器官(生卵器)だけが並んだ部分です。
雄性生殖器官はシャジクモの頂点に近い部分だけに見られます。
少し根元側には雄性生殖器官がなく、雌性生殖器官(生卵器)だけがあります。
若い雌性生殖器官はオレンジ色です。

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若い雌性生殖器官(生卵器)の詳細な画像です。
雌性生殖器官(生卵器)は小苞と呼ばれる細胞に保護されています。
緑色の細胞で、長さは雌性生殖器官と同程度、
花びら、またはガクのような構造です。

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こちらは、少し根元に近い部分の雌性生殖器官(生卵器)です。
色が濃くなっています。
雌性生殖器官内部の卵胞子が成熟してきているのかもしれません。

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やや根元に近い部分の雌性生殖器官(生卵器)の詳細な画像です。
生卵器自体の大きさに変化はないようです。

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こちらは本体からこぼれ落ちた卵胞子(接合子)です。
卵胞子には螺旋状の構造があります。
種や属によって、卵胞子の形態は異なるようです。

ホシミドロなどの接合子と同じものと思いますが、
シャジクモ類の場合は特別に卵胞子と呼ぶようです。
卵胞子(接合子)は乾燥に耐えられる構造をしています。
実際、今回の試料は乾燥した田土(石田精華園さんで購入)から発生しました。
京都府産の水田が起源です。
石田精華園さんの周辺の水田にはシャジクモが繁茂しているのでしょう。

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こちらは主軸の節の部分から小枝(輪生枝)が生じる部分です。
托葉冠と呼ばれる短いトゲのような細胞が
小枝の根元側に付いているのですが、
この写真では不明瞭です。
というよりも、托葉冠が小さく目立ちません。
主軸には螺旋状の構造があります。
主軸は皮層で覆われているようです。

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主軸の拡大画像です。
主軸の本体は節から節までの間が1個の細胞でできています。
顕微鏡で観察すると、細胞内部の構造が原形質流動により、
高速で移動するのが分かります。
種や属によっては、主軸の表面が皮層で覆われます。
今回の種(シャジクモ属(Chara sp.))には皮層があるようで、
主軸表面に螺旋状の構造が見られます。

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主軸の表面の拡大画像です。
多数の細胞がタイルのように敷き詰められているように見えます。
タイルのような構造が本当に細胞なのか、
細胞表面の構造なのか判断できませんでした。
資料を探しているところです。

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こちらは小枝(輪生枝)です。
小枝(輪生枝)は皮層に覆われていないようで、透明感があります。
種や属によっては、小枝(輪生枝)の表面が皮層で覆われます。
主軸が皮層で覆われ、小枝(輪生枝)には皮層がない種は、
イトシャジクモ(Chara fibrosa)と、その近縁種です。
今回の種はイトシャジクモに特徴が似ているのですが、
托葉冠と苞が短い特徴が、イトシャジクモ(Chara fibrosa)と異なるため、
種レベルの同定は保留としました。

小枝(輪生枝)の先端は、複数のトゲのような細胞があり、
“冠状”となっています。
この構造も分類の役に立つそうです。

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シャジクモの仮根です。
陸上植物のような本物の根ではないという意味で仮根と呼びます。
仮根部に白色の "球状体"を持つ種もあります(シラタマモ、Lamprothamnium succinctum)。

今回のコラムは下記の文献を参考にいたしました。

しゃじくもフィールドガイド
独立行政法人国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 生物資源保存研究推進室 微生物系統保存施設

http://mcc.nies.go.jp/Chara2006/chara_fieldguide.htm

車軸藻の見分け方 | NIES コレクション
http://mcc.nies.go.jp/Chara2006/chara-4.html

植物の上陸作戦=シャジクモの辿った道
坂山 英俊 神戸大学大学院理学研究科

藻類の多様性と系統
バイオディバーシティ・シリーズ
岩槻邦男、馬渡峻輔 監修、千原光雄 編集、裳華房、1999

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