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2019年2月16日 (土)

土壌生物の採取方法(トゲダニ詰め合わせ):川崎市2019年1月

前回のブログ記事の続きです。
自作の“DIY簡易ツルグレン装置”で採取したダニとトビムシを紹介します。
サンプルの腐植はお正月に近所の公園(川崎市)で採取したものです。
昆虫の幼虫とトビムシ、それにトゲダニ類を採取できました。
ササラダニが少なかったことが今回の土壌群集の特徴ですね。

まず、ハエダニです。
ハエダニ科(Macrochelidae)、ハエダニ属(Macrocheles sp.)と同定しました。
ねこのしっぽラボでは、ハエダニ属は2017年5月の新潟以来、2年ぶり2個体目です。
とはいえ、それほど珍しい種類ではないと思います。

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背板前端が突出しているか、そうでいないかでクチナガハエダニ属(Holostaspella sp.)かハエダニ属(Macrocheles sp.)かが分かれます。
本種の場合、やや判断が難しいのですが、
“日本ダニ類図鑑”と“日本産土壌動物”のイラストと比較すると
背板前端が突出しないハエダニ属(Macrocheles sp.)として良さそうです。

背板前端の背毛が1本失われていますね。
完全な標本はなかなか難しいです。

右下の画像は鋏角ですが、
細長い羽毛状の毛束があります。
“日本産土壌動物”の検索図説ではこの毛束を持つのは
ホコダニ科(Parholaspididae)とハエダニ科(Macrochelidae)になります。

では、ホコダニ科とハエダニ科をどう識別するかというと・・・。

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こちらは周気管後端の気門の拡大写真です。
周気管後端がくるっと湾曲してます。
これはハエダニ科の特徴です。

対して、ホコダニの周気管後端は直線状です。
過去の記事“トゲダニ亜目 ホコダニ科 ホコダニ属(Holaspina属) 茨城県2018年1月”をご参照ください。

ハエダニ科はトビムシや昆虫を補食するそうです。
今回のサンプルからはハエ・アブ類の微細な幼虫が多数見つかったので、
これらを捕食していたのかもしれませんね。

続いてヤドリダニ科(Parasitidae)です。

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背板が2枚に分かれていて、
大型の後胸板を持っています。
形態的にはEugamasus属に似ているように思います。

詳細な分類には背板毛と蝕肢の観察が必要なようですが、
ヤドリダニ科を初めて見たので見逃してしまいました。
なので、ヤドリダニ科の1種としておきます。
次回は属レベルまで持って行きたいですね。

ヤリダニ科(Eviphididae)です。

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ナミヤリダニ属(Copriphis sp.)と同定しました。
“日本産土壌動物”のコガネムシダニ(Copriphis disciformis)の記載に似ています。
周気管板の後端が幅広く、生殖板の後縁に達します。
第2~4脚の基節間は離れています。
(近縁のセマルヤリダニ属(Evimirus属)は第2~4脚の基節間が狭いです)
トゲダニにしては同定が容易なタイプですね。

こちらもヤリダニ科ですが、第2~4脚の基節間が狭いです。

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こちらはセマルヤリダニ属(Evimirus属)と思われます。
同じ場所にヤリダニ科の2属が共存していたのですね。
ねこのしっぽラボではヤリダニ科自体が初で、
一気に2属記載できました。

イトダニ科の1種です。

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Uroobovella sp.と思われます。
和名はタマゴイトダニ属でしょうか。
体長1.1mm。大きさ的にはキュウヒタマゴイトダニ(Uroobovella japanomarginata)に類似します。
日本ダニ類図鑑によれば胴長1.05mmとされています。
ただ、イトダニ科の同定は難しいので、
あまり自信がありません。
茶褐色で硬化が進んでいるので光が透過しにくく、
細かな構造の観察が難しいです。

小型のイトダニ科です。

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Uroobovella属に似ていますが、
図鑑の記載を読んでいても、これだっ、という確信がありません。
幼体かもしれないですし、個体数を増やして確認したいですね。

ホコダニ科の1種です。

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鋏角と気門の特徴を見る限り、
ホコダニ科なのは間違いないと思うのですが、
顎体突起と後胸板の有無を観察できていないので、
再観察が必要です。
採取地は家から徒歩圏内なので、後で採取しましょう。
蚊が発生する前に。

という訳でダニは終わりです。
初めて見るトゲダニが複数いたので満足度は高かったです。

続いてトビムシです。

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イボトビムシ科(Neanuridae)なのは間違いないですが、
細かな分類ができていません。
トビムシは多様性が非常に大きいので勉強が大変です。

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こちらはツチトビムシ科(Isotomidae)だと思います。
跳躍器が長いタイプですね。
トビムシの記載があっさりしていてすみません・・・。
興味が無いわけじゃないんですけど、
別の機会にちゃんとやりましょう。

2019年2月 7日 (木)

土壌生物の採取方法(DIY簡易ツルグレン装置)

土壌生物の採取をするには冬から春にかけての期間が適しています。
冬でも土壌生物は見つかりますし、
草が生えていないのでサンプルを採取しやすい。
そして何より蚊がいない!

そのような訳で今回は“ねこのしっぽラボ”で実際に使っている
土壌生物採取装置(DIY簡易ツルグレン装置)を紹介します。

まず材料ですが、こんな感じです。


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右側の上から、(1)金属製のざる、(2)用途不明のろうと、(3)プラスチック製の容器
この3つの部品でDIY簡易ツルグレン装置2号機を作ります。

左側は進化したタイプで、
(1)園芸用のフルイ、(2)プラスチック製の容器で、
これだけでDIY簡易ツルグレン装置3号機を作ります。

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それぞれ、こんな感じで組み立てます。
固定はビニールテープです。
途中で白色のビニールテープが無くなったので紅白のおめでたい感じになってしまいました。

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さらにアルミホイルで覆って遮光します。
この後、内部に各々150ミリリットルの水道水を注いでおきます。

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できあがった2号機、3号機を上から見たところです。
下のビニール袋にはサンプルの腐葉土が入っています。

冬になると落ち葉が積もりますが、
落ち葉の層と、土が接する辺りには黒く変色したボロボロの落ち葉があります。
この部分は薄いのですが、その部分(腐植)を採取すると
たくさんの土壌生物が見つかります。

また、採取場所ですが、森の奥深くに入って行かなくても、
車道脇の側溝付近で十分です。
側溝にたまった落ち葉を掃除するような感じで除去すると、
腐植が見つかることがあります。
さすがに町中の側溝は無理ですが、
山道の車道脇には落ち葉がたまっていることが多いですね。

今回は川崎市で採取しました。

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腐植を2号機、3号機に充填したところです。

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こちらが2号機の写真。
落ち葉が細かくなっています。
土壌生物が落ち葉を分解している証拠ですね。
2号機のザルの編み目は粗いので数mm程度の大型の土壌生物がターゲットです。

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3号機の写真です。
フルイの編み目が細かいので1mm以下のダニやトビムシの採取専用です。

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土壌を充填した簡易ツルグレン装置を風通りの良いベランダに放置します。
本格的なツルグレン装置は白熱電灯を照射して土壌生物をトラップに追い込むのですが、ねこのしっぽラボの方法は太陽光を利用します。
その代わり、3日~1週間ほど時間をかけて土壌生物を抽出します。
室内には置かない方が良いでしょう・・・。
大型のミミズなどが装置の外に出てくることがあります。

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1週間放置してカラカラになった腐植です。
今回の試料は土(鉱物)の成分がほとんど入っていないので、
乾燥するとすごく軽くなりました。

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2号機の写真です。

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3号機の写真です。


腐植がカラカラに乾燥したら網やフルイを解体して、
プラスチック製の容器の水を観察します。

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昆虫の幼虫やミミズなど大型の生物は水底に沈んでいます。
大型のササラダニやトゲダニも水底に沈んでいることが多いですが、
肉眼では観察が難しく、実体顕微鏡があると便利です。
だいたい生きています。
今回はハエ・アブの幼虫が多かったです。

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トビムシや小型のササラダニは水面に浮かんでいることが多いです。
白いホコリのようなものや、赤い粒がトビムシです。
トビムシは1mmくらいの大きさなので注意すれば肉眼でも動いていることが分かります。

今回のサンプルではササラダニはあまり見つかりませんでした。
逆にトビムシやトゲダニが多く見つかりました。
今回撮影できたトビムシやトゲダニは次回の記事で紹介したいと思います。

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ちなみにこちらは秋田県で採取した腐植で、
今回の試料よりも分解が進んでいます。
この試料からはササラダニが多く見つかりました。
腐植の分解の程度によって土壌生物の種類も変わるようです。
自由研究のテーマに良いかもしれないですね。

2019年1月27日 (日)

ゾエアとメガロパ

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横浜の金沢八景で2014年5月に採取したゾエア幼生です。
ゾエア幼生はエビ、ヤドカリ、カニなどの十脚類の幼生ですが、
写真のゾエアはカニの幼生と思います。
ただ、種や属の識別は難しいですね。

カニ類ではゾエアの次にメガロパ幼生になります。

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写真のメガロパは2017年8月に牡鹿半島で採取したものです。
種類は不明です。
ですので、最初の写真のゾエアとは種類が違う可能性があります。

ゾエアはカニとは全く異なる形をしていますが、
メガロパは立派なハサミを持っていてカニに似ています。
カニとの違いは腹部を伸ばしているところですね。

さて、ゾエアが脱皮を行ってメガロパになるわけですが、
ゾエアの何処にメガロパのハサミや胸脚が入っているのか不思議に思っていました。

ですが、ついに見つけました!

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ハサミを持つゾエアです。
どうやらメガロパになる直前の状態みたいですね。
胸脚もできています。
ハサミはゾエアの頭部や腹部に収まっていたわけでは無いのですね・・。
思いっきりはみ出してます。
このゾエアは昨年の夏に男鹿半島で採取したものですが、
写真を整理していて気がつきました。
写真を撮っているときは流れ作業なのであまり気がつかないものですね。

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こちらのゾエアも同じ時に採取したもので
胸脚ができています。

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こちらは同じ場所で採取したメガロパです。
時空間が一致しているので同じ種類かもしれないですね。

2019年1月 9日 (水)

クラミドモナス(Chlamydomonas sp.):2016年 霞ヶ浦

藻類の画像を整理していたら、
わりと綺麗なクラミドモナス(Chlamydomonas sp.)の写真があったので
ブログにあげておきます。

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2016年に霞ヶ浦で採取した個体です。
細胞の下側の赤い構造は眼点です。
細胞の中央にある楕円形の大きな構造はピレノイドです。
核と思われる構造がピレノイドの左側にあります。
さらにその左側、鞭毛の付け根には収縮胞があります。

ところで、クラミドモナスの写真を撮ると、
かなりの確率で眼点が真横を向くのですが、
なんででしょうね。

2019年1月 3日 (木)

2019年、良い年でありますように

今年もよろしくお願いいたします!

2019

昨年はホームページの更新ができませんでしたが、
画像データは順調にまとまってきています。
今年春に藻類画像デーベースの更新、
秋に土壌生物の更新を計画しています。
甲殻類(主にヨコエビ)の更新は年内にできるかどうか、
一応、今年中の更新を目指します。

昨年のトピックスは、
伊豆大島と男鹿半島に遠征したこと、
三番瀬で干潟のエビ・カニを採取できたこと、
カニのマクロ撮影用のデジタルカメラを導入したこと、
生物顕微鏡に偏光フィルターを組み込んで
石灰質ナノ化石の撮影に成功したこと、
こんなところでしょうか。

さて、今年はどんな年になるでしょうか?
事故と健康にだけは気を付けたいですね。
まずは1月11日に大腸内視鏡検査が待ってます・・・。

2018年12月16日 (日)

モクズヨコエビ科(Hyalidae)の1種:伊豆大島2018年3月

ハマトビムシ上科の分類に苦戦しています。
最大の課題としてモクズヨコエビ科のProtohyale属と、
Hyale属(モクズヨコエビ属)の違いが分かりません。
ヨコエビ類の分類は日本海岸動物図鑑だけが頼りなのですが、
Protohyale属の記載が無いのですよね・・・。

例えばこの種です。
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今年の3月に伊豆大島で採取したヨコエビです。
モクズヨコエビ科で間違いないかな、と思っています。
模様だけを見るとProtohyale affinis(フサトゲモクズ)に似ています。

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こちらは第1触角。

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こちらが第2触角です。
第2触角は体長の半分よりも明らかに短いですね。
小川 洋氏の「東京湾のヨコエビガイドブック」によれば、
フサトゲモクズの触角は体長の半分くらいだそうなので、
この種(個体)は当てはまらないですね。

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第1胸脚です。
際だった特徴は無いです。

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第2胸脚です。
雄なのは間違いないですが、際だった特徴は無いです。

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第3胸脚です。

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第4胸脚です。

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第5胸脚です。

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第6胸脚です。

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第7胸脚です。

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これは第1胸脚の底節板(第1底節板)です。
矢印のところに突起があります。
「東京湾のヨコエビガイドブック」によれば、
フサトゲモクズ(Protohyale affinis)の第1~4底節板は
後縁に突起があるそうです。
ただ、日本海岸動物図鑑によればHyale属のフサゲモクズ(Hyale barbicornis)
も突出部があるそうなので、決め手にはならないですね。

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第2胸脚の底節板(第2底節板)です。
矢印のところに突起があります。

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第3胸脚の底節板(第3底節板)です。
矢印のところに突起があります。

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第4胸脚の底節板(第4底節板)です。
矢印のところに突起があります。

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続いて第1尾肢です。
「東京湾のヨコエビガイドブック」によれば、
フサトゲモクズ(Protohyale affinis)の第1尾肢柄部外側には
長いトゲがあるそうなのですが、この個体(種)にはそれがありません。
いえ、少しだけ他よりも長いトゲはあるのですが、
「東京湾のヨコエビガイドブック」のイラストよりも短いです。
やはり、フサトゲモクズ(Protohyale affinis)ではないみたいですね。

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第2尾肢です。
第3尾肢は取り損ねたので
あとで他の個体の画像を紹介します。

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尾節板です。
尾節板は完全に双葉に分かれています。
このことからヘッピリモクズ属(Allorchestes 属)ではないようです。

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念のため腹部も載せておきます。

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別個体です。
こちらも個体も解剖を行いました。
第3尾肢だけ掲載します。

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第3尾肢です。
第3尾肢は単柄のようです。
なのでフタアシモクズ属(Parallorchestes 属)ではないようです。
ただ、フタアシモクズ属は双柄とはいっても、
短い方の柄は、かなり短いので見逃さないようにしたいですね。

といった理由で結局、この個体の属レベルの同定はできませんでした。
とりあえず、モクズヨコエビ科の1種としておきます。

2018年11月18日 (日)

チビヨコエビ科 Gitanopsis属:茨城県 2018年1月

秋も深まってきて眠いです。
個人的には春よりも秋の方が眠いです。

今回はデータ整理中のヨコエビの画像です。
というか、今年は甲殻類や土壌生物のデータ整理で終わってしまいそう。
ホームページの更新は来年ですね。

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今年の正月に茨城県で採取したヨコエビです。
基本的にはチビヨコエビ科(Amphilochidae)に似ています。
そのなかでもGitanopsis属に似ています。
同じチビヨコエビ科のApolochus属にも似ているのですが、
ポイントがよく分かりません・・。
今回はGitanopsis属の1種としておきます。

このヨコエビはこれまでにも見つけていましたが、
不明種として処理していました。

ヨコエビ_分類群190(260)
http://plankton.image.coocan.jp/Crustacea3-2-1-3-1-260.html

10月にブログで紹介したチビヨコエビ科(Amphilochidae)の不明種にも似ています。

さて解剖の記録です。
まず触角です。

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上が第1触角、下が第2触角です。
どちらも触角も短いです。
第1触角には毛状の棘があります。

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顎脚です。

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大顎です。
長く伸びている部分は鬚(Palp)と呼ばれる部分です。

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第1胸脚です。
掌縁が丸みを帯びています。
咬脚のタイプは“Transvers (Rectipalmate)”と呼ばれるタイプのようです。

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第2胸脚です。
掌縁が丸みを帯びていますが、第1胸脚よりは直線的です。
咬脚のタイプは“Transvers (Rectipalmate)”と呼ばれるタイプのようです。
10月にブログで紹介したチビヨコエビ科(Amphilochidae)の不明種とは、
形状が大分異なります。

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第3胸脚と第4胸脚です。

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第5胸脚と第6胸脚です。

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第7胸脚です。

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第1尾肢です。
内肢と外肢の両方を持ちます。

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第3尾肢です。
内肢と外肢の両方を持ちます。
第2尾肢は分離し損ねました。

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尾部の形状です。
これを見ると第2尾肢も二肢型のようですね。

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尾節板です。
尾節板は細長い三角形で、
第3尾節が両脇から包むように伸びていて、
全体的には漢字の山のような形状になっています。
この形状は10月にブログで紹介したチビヨコエビ科(Amphilochidae)の不明種に類似します。

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腹節です。
ヒョウ柄ですね。

2018年11月15日 (木)

カマアシムシ:秋田県男鹿半島(2018年8月採取)

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秋田県の男鹿半島でカマアシムシを採取しました。
カマアシムシは節足動物門 六脚上綱 内顎綱 カマアシムシ目に属しています。
3対の胸脚があるので昆虫に似ていますが、
共通しているのは六脚上綱までで昆虫(昆虫綱)ではありません。
トビムシ目とコムシ目とともに内顎綱を構成します。
内顎綱と昆虫は近縁で、無翅亜綱として昆虫綱に含まれていたときもあります。

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写真は100倍の画像です。
今回撮影した写真では確認できませんが、
腹部に3対の腹肢(付属肢)があります。
前脚(第1胸脚)を鎌のように折り曲げ、前方に突き出して触角の代わりに使います。
触角はありません。
目もありませんが、頭部背側面に1対の偽眼(感覚器)があります。

カマアシムシは1mm前後の小さな虫なので、
ほとんど目にすることはないと思いますが、
昆虫の系統進化を考える上では面白い虫です。


2018年10月21日 (日)

ヒメハマトビムシ種群(Platorchestia pacifica)の解剖:秋田県2018年8月

「ねこのしっぽ -小さな生物の観察記録-」のヨコエビ画像集
ヒメハマトビムシ(Platorchestia platensis)という種を掲載していますが、
日本産のヒメハマトビムシに対し、
Platorchestia platensisという種名を使うのは不適切のようです。
というのも、そもそもPlatorchestia platensisはアジアには存在しないとのことです。

では、日本産のヒメハマトビムシの種名(学名)は何なのか、
という問題が起きますが、
現状、Platorchestia joiが本命のようです。
ただし、他にもP. pacificaP. parapacificaなどの種も
ヒメハマトビムシとされてきたようなので一筋縄にはいかないようです。
この辺りの研究史はかなり複雑ですが、
H. Ogawa氏のヨコエビがえし、ハマトビムシ入門(9月度活動報告)
詳しくまとめられているのでこちらをご参照ください。

さて、前述したヒメハマトビムシのページは
広義のヒメハマトビムシ種群(Platorchestia spp.)に修正するのが妥当として、
それだけではすっきりしないので、
新たに男鹿半島で採取したヒメハマトビムシを材料に、
日本産土壌動物 分類のための図解検索【第二版】青木淳一編著と
H. Ogawa氏のヨコエビがえし、ハマトビムシ入門(9月度活動報告)を参考に
細かく同定していきたいと思います。

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まず全体像です。
この個体は男鹿半島南岸の鵜ノ崎海岸で採取した個体で、
比較的大型の個体です。

2_im180821__16__x2_25601920_1mm

頭部の画像です。
喉部は平坦です。
この個体は既にヒメハマトビムシ種群と同定しているので、
あまり意味はないですが、
「喉部が緩く突出する」ホソハマトビムシ属(Paciforchestia属)と区別できます。
(日本産土壌動物参照)
ついでに、第1胸脚触角の先端が柄部第5節の中央に達していないことも分かります。
この辺りの形質はオカトビムシ系の分類に必要なようです。

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第1触角です。
柄部3節、鞭部6節です。
ハマトビムシ科は第1触角が短いことが特徴です。
昆虫もそうですが、陸上生活を行うには2対の触角は邪魔なのかもしれませんね。

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第2触角です。
柄部3節、鞭部13または14節です。

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分類にあまり必要性がない部位ですが、
顎脚です。

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第1胸脚です。
特徴的な形態ですね。

7_im180821__16_21_x40_25601920_500m

第2胸脚です。
ここが最大のポイントです。
掌縁部に2個の突出があります。
ニホンヒメハマトビムシ(Platorchestia pachypus)と区別する上で大事な形質です。
といっても、未成熟個体では2個の突出が不明瞭なので安定的な形質ではないかも。
さらに、メインテーマのPlatorchestia joiP. pacificaP. parapacificaについてですが、
第2咬脚前節下縁に剛毛を欠くことからP. joiは除外できます。
(ハマトビムシ入門(9月度活動報告)参照)
狭義のヒメハマトビムシ(P. joi)ではないということです。

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第3胸脚です。
前節と腕節の長さを見比べます。
前節が腕節よりも明らかに長ければP. joi
ほぼ同じ長さであればP. pacificaP. parapacificaです。
今回は見た目には前節の方が長いように見えるのですが、
実際に計ってみると前節が0.491μm、腕節が0.485μmで、
小数点第3桁を丸めると同じ0.49μmになってしまうので、
ほぼ同長と言って良いのではないでしょうか。
といっても、実際に間違いなくP. joiという個体を比較検討してみないと、
どこまでを同じ、あるいは違うと言ってよいのか
判断できないと思います。
あとは、前節と腕節は太さが違うので目の錯覚も起きそうです。
ちゃんと計らないと難しいですね。

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第4胸脚です。
あまり必要性のない部位です。
今回気がついたのですが、ハマトビムシは第3胸脚と第4胸脚の長さが異なるのですね。
ヨコエビの多くは第3胸脚と第4胸脚が区別できないほど似ているので、
派生的な形態といえるかもしれません。

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第5胸脚です。
あまり必要性のない部位です。

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第6胸脚です。
第6胸脚自体には見所はないのですが、
基節板はちょっとしたポイントです。

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こちらは第6胸脚の基節板です。
ヒメハマトビムシ属は第6胸脚の基節板後葉の前下縁が直角、またはここに突起があります。
少々分かりにくいですが写真中央下部の丸い角のことです。
角は丸いですが、前縁と下縁が直角に交わっています。

13_im180821__16_72_x3_25601920_1mm

第7胸脚です。
あまり必要性のない部位です。

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左右の第1腹肢です。
ここ以降、今回の核心の分類学的に深い部分に入ります。

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第2腹肢です。
第2腹脚柄部縁部の剛毛数は9本です。
P. pacificaは3本、P. parapacificaは7本とのことなので、
P. parapacificaにより近いでしょうか。
第2胸脚の形態から除外しましたがP. joiは13本だそう。
きっちり数が合わないのはモヤモヤしますが、
おそらく成長に伴って数が変化するのではないでしょうか?

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もう一本の第2腹肢です。
第2腹脚柄部縁部の剛毛数は9本です。
左右の数は安定しています。

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第3腹肢です。
第3腹脚柄部縁部の剛毛数は10本です。

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第3腹肢にはもう一列の棘があって、
こちらは識別が難しいのですがおそらく6本です。

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もう1本の第3腹肢です。
第3腹脚柄部縁部の剛毛数は11本です。

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もう一列の棘です。
識別が難しいのですが6本です。
したがって、第3腹肢の棘は11本と6本の2列ということになります。
P. pacificaが9本と6本、
P. parapacificaが9本と5本とのことなので、
どちらとも判別できないです。
あえていえば、P. joiの11本と7本が一番近いのですが・・・。

21_im180821__16_1_x40_25601920_500m
気を取り直して第1尾肢です。
今回はあまり重要ではないですが、
オカトビムシ系の分類には必要な部分です。
側端棘の長さを見ます。

22_im180821__16_2_x40_25601920_500m
第2尾肢です。
ホソハマトビムシの種の同定には必要な部分ですが、
今回はあまり重要ではありません。
縁棘の本数を見たりします。

23_im180821__16_3_x40_25601920_200m

第3尾肢です。
オオハマトビムシとホッカイハマトビムシの識別には重要ですが、
今回はあまり重要ではありません。
下縁に棘があるか、ないかを見ます。

24_im180821__16__x40_25601920_200m
さて最後のポイント、尾節板です。
ここの棘の本数をみるのですが、
これはかなり難しいのではないのでは・・・?
この部分を綺麗に取り外すのは難しいですし、
必要倍率も微妙ですよね。

25_im180821__16__x100_25601920_200m

というわけで40倍では難しそうなので100倍で検鏡します。
ただ焦点深度が浅くなるので複数写真を見比べます。
とりあえず棘の本数は7本で間違いないようです。
また、頭部側に2本の棘が隣接して配置されています。
この特徴はP. pacificaに類似しますね。

P. parapacificaは頭部側に3本の棘が隣接して配置され、
合計本数は10本なので大分違いますよね。

ちなみに、P. joiは頭部側に2本の棘が隣接して配置され、
合計本数は8本です。

さて、まとめです。
どの形質を重要視するかによって結論が変わると思うのですが、
第2胸脚の棘の有無はデジタルなので、
これを最優先にしてみます。
すると、P. joiが除外されます。

第3胸脚は判断に迷ったので除外します。
ただ、前節と腕節がほぼ同長とすれば、
第2胸脚の結果と矛盾しません(P. joiが除外されます)。

次に、腹肢の棘の本数ですが、
きっちり合うものがないのでなんとも言えません。
第2腹肢に関してはP. parapacificaが最も近いです。

尾節板に関してはP. pacificaに特徴が一致します。

尾節板と腹肢のどちらを重要視するかで
P. parapacifica or P. pacificaが変化するのですが、
今回は尾節板に軍配を上げたいと思います。

ということで、P. pacificaとして同定します。

2018年10月 7日 (日)

チビヨコエビ科(Amphilochidae)の不明種

ありきたりの表現ですが、暑いですね。
最近はサンプリングにも行かず、ひたすらデータ整理をしています。
さて、今回はデータ整理中のヨコエビの画像です。
Im170503__40_1

Im170503__40_2

このヨコエビはこれまでにも見つけていましたが、
不明種として処理していました。

ヨコエビ_分類群190(260)
http://plankton.image.coocan.jp/Crustacea3-2-1-3-1-260.html

色彩はともかく似たような形態のものを集めたつもりですが、
複数種、場合によっては複数属含まれているかもしれません。
基本的にはチビヨコエビ科(Amphilochidae)に似ています。

昨年のGWに新潟県でこの種を見つけたので、
解剖を行って細かく観察してみました。

Im170503__40_3

まず第1胸脚です。
前節の掌縁が特徴的です。
掌縁と後縁は直角に近い角度です。

ちなみに右の写真は40倍(x4)の対物レンズで撮影した画像。
左は100倍(x10)のレンズで撮影した画像です。
40倍の方が解像度が低いですが、焦点深度が深いですね。
解像度と焦点深度を両立させるのは難しいです。

Im170503__40_4

次に第2胸脚です。
掌縁と後縁は直角よりも鋭角です。
Gitanopsis属に似ているのかなあ、と思っていたのですが、
文献と知識が不足していますし、
ネットで見つかるGitanopsis属の第2胸脚と
何かが違っているし、
チビヨコエビ科の不明種に留めておくのが良さそうですね。

Im170503__40_5

第3胸脚です。
覆卵葉があるのでこの個体は雌ですね。

Im170503__40_6

左が第4胸脚、右が第5胸脚です。

Im170503__40_7

左が第6胸脚、右が第7胸脚です。

Im170503__40_8

尾部です。
第3尾肢が分かりにくいですね。

Im170503__40_9
尾節板です。
漢字の山に似た形状です。
この辺りも特徴なのかもしれません。

ヨコエビは深いですね。
文献がたくさんあるところに行ったら、
あっという間に一日終わりそうです。

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