2020年7月23日 (木)

フリソデダニ科(Galumnidae)の1種:小櫃川河口干潟(盤洲干潟)2019年10月

連休なので連日の記事更新です。

というか、先日採取したホウネンエビの解凍中です。

隙間時間で記事を書きました(効率的!)

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フリソデダニ科(Galumnidae)の1種です。
フリソデダニ科は世界で30属以上、400種以上を含む大きな科です。
可動の翼状突起(振り袖)が大きな特徴です。
ケタフリソデダニ科(Parakalummidae)に似ていますが、
背嚢の代わりに背孔があり、桁はないか畝状にならない隆起線があり、
翼状突起に背毛があるなどの違いがあります。

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写真の種は昨年の秋に東京湾岸の小櫃川河口干潟(盤洲干潟)で採取したものです。
フリソデダニ科は構成分類群が多く、
しかも微細構造の観察が難しいので属レベルの同定を試していません。
小型種は真っ黒で黒光りをしているので撮影すら難しいです。

ヨコエビ画像集の更新案内7 メリタヨコエビ科 Melitidae Bousfield, 1973

忘れたころにヨコエビ画像集の更新案内です。

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今回はメリタヨコエビです。
日本海岸動物図鑑[II]によれば、メリタヨコエビ科(Melitidae)は世界で69属が知られています。
日本からは10属が知られています。主要属はイソヨコエビ属(Elamopus)、スンナリヨコエビ属(Maera)、
メリタヨコエビ属(Melita)、ヤシャヒメヨコエビ属(Abludomelita)です。
これらの属を見分けるためには第3尾肢を詳細に観察する必要があります。
イソヨコエビ属の第3尾肢の2本の枝は同じ長さで短く、
スンナリヨコエビ属の第3尾肢の2本の枝は同じ長さで長く、
メリタヨコエビ属の第3尾肢は内肢は鱗状で外肢は長く1節、
ヤシャヒメヨコエビ属の第3尾肢は鱗状で外肢は長く2節(先端節は小さい)などの違いがあります。

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宮城県の万石浦で採取したヒゲツノメリタヨコエビ (Melita setiflagellaです。
ヒゲツノメリタヨコエビ(Melita setiflagella)は大きな川の河口付近や、
沿岸汽水域の貝殻の内側などで見つかります。
第1触角の副鞭は3節。第2触角鞭部に長い棘が密生します。
東京湾の多摩川河口干潟葛西海浜公園でも採取しています。

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伊豆大島で採取したナガタメリタヨコエビ(Melita nagatai)です。
ナガタメリタヨコエビ(Melita nagatai)は下記の特徴を持ちます。
副鞭は3節、雄の第1咬脚の下縁が三角形に突出、雌の第1咬脚の
指節は掌縁よりも短い、雌の第6底節板に段差がある、
第3腹側板の後縁の角に小さな歯状突起がある。
ナガタメリタヨコエビ(Melita nagatai)は干潟の他、磯の転石の下からも見つかります。
宮城県の万石浦秋田県男鹿半島でも採取しています。

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宮城県の万石浦で採取したシミズメリタヨコエビ(Melita shimizuiです。
シミズメリタヨコエビ(Melita shimizui)は下記の特徴を持ちます。
副鞭は1節、雄の第1咬脚の下縁が四角形に突出、雌の第6底節板に段差がある、
第3腹側板の後縁の角に小さな歯状突起がある。
シミズメリタヨコエビは干潟などで見つかります。
東京湾の三番瀬干潟でも採取しています。

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北海道積丹町で採取したヤシャヒメヨコエビ属(Abludomekita sp.)です。
ヤシャヒメヨコエビ属の第3尾肢の内枝は鱗状、外枝は長く2節で、外枝の先端節が小さいことが特徴です。
日本海岸動物図鑑[II]によれば、メリタヨコエビ属とヤシャヒメヨコエビ属はよく似ていているので
近い将来に再統合される可能性があるとのことです。

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神奈川県三浦市で採取したスンナリヨコエビ(Maera sp.)です。
日本海岸動物図鑑[II]によれば、(1)第2咬脚が大きく長方形で、掌部が後縁に対し直行する、
(2)後端歯が他よりも大きい、などの特徴を持っています。
昨年、伊豆半島の下田近辺でも採取しました。
相模湾に広く分布しているかもしれません。

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茨城県ひたちなか市で採取したイソヨコエビ(Elasmopus cf. japonicus)です。
イソヨコエビ(Elasmopus japonicus)は体長14mm、第1触角の副鞭は4節で先端節は小さい、
雄の第2咬脚は前節が肥大化、掌部は縦走、長毛が密生し先端部に半円形を描く棘列がある、
尾節板は基部近くまで切れ込む、などの特徴を持ちます。
本州以南の岩礁帯に生息するそうです。
また、Elasmopus 属には数種の未報告種があるとのことであり、
ここで記載する種もイソヨコエビ(Elasmopus japonicus)ではなく、
Elasmopus 属の未報告種である可能性があります。
ここで記載する種の第1触角の副鞭は1節であり、
日本海岸動物図鑑によるイソヨコエビ(Elasmopus japonicus)の記載と異なります。

2020年7月 5日 (日)

アメリカカブトエビ(Triops longicaudatus)の観察記録:群馬県 2020年6月

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群馬県藤岡市で採取したカブトエビです。
尾節(肛門節)の特徴からアメリカカブトエビ(Triops longicaudatus)と同定しました。
最終的には“甲殻類図鑑”で記載する予定ですが、
まずはブログで情報を整理しておきましょう。
オリンパスのコンパクトデジタルカメラ Tough TG-5で
満足のいく写真が撮れたので早く紹介したい気持ちもあります。
新製品のTG-6が発売済みですが、旧製品のTG-5でもここまで撮れます!

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カブトエビと言えば“鎧兜”のような背甲が特徴です。
この背甲の形が似ているのでカブトガニと混同されがちですが、
カブトエビは甲殻類、カブトガニは鋏角類なので全く異なる系統の生物です。

カブトエビは鰓脚綱(Branchiopoda)、
背甲目(Notostraca)、カブトエビ科(Triopsidae)に属しています。
鰓脚綱まではホウネンエビアルテミア(サルソストラカ亜綱)と共通です。
双殻亜綱(Diplostraca)ミジンコカイエビだけを含み、葉脚亜綱(Phyllopoda)はミジンコ、カイエビ、カブトエビを含みます。 

鰓脚綱のなかでは サルソストラカ亜綱が異質ということでしょうか。

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こちらはアメリカカブトエビを腹側から観察した画像です。
頭部に近い部分からアンテナのように側方に伸びているのは第1胴肢です。
子供の頃は触角だと思っていました。
後端の尾節(肛門節)からは2本の枝状肢が伸びます。

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腹側の拡大画像です。
ヒレ状の脚(胴肢)が非常に多いことが分かります。
11番目の脚は育房に変形しています。
育房よりも前方の10対の脚と後方の脚では形状が少し異なります。
“節足動物の多様性と系統”によれば胸部と腹部の境は明瞭ではなく、
生殖節よりも前部を胸部、後部を腹部と便宜的に呼ぶそうです。
エビヨコエビは胸部と腹部の境界が明瞭なので、
付属肢を胸肢、腹肢と分けて呼びますが、
カブトエビでは胸部と腹部が不明瞭なので、
まとめて胴肢と呼称するみたいですね。

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腹側を斜めから見た画像です。
眼は背甲の上側に付いていて、口は背甲の裏側にあるので
カブトエビは食べ物を見て口に運ぶことができません。
食べられるものか、食べられないものかの判別は
眼とは別の感覚器に頼っていることが分かります。
眼は外敵を警戒するために使われているようです。

それにしても脚が多いですね。
これら多数の脚を波打つように動かして
遊泳したり餌を口に運んだりします。

さて、ここからは実体顕微鏡の出番です!
いつものニコンSMZ745Tによる画像です。
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背甲前部の拡大画像です。
デジタルカメラの画像とは別の個体です。
一対の複眼が印象的です。
複眼の中央後ろ寄りにはノープリウス眼があります。
左の写真の白矢印の部分がノープリウス眼です。

ノープリウス眼は甲殻類のノープリウス幼生が持つ眼で、
カブトエビやホウネンエビなどの鰓脚綱は成体になっても
ノープリウス眼が残存します。
これは祖先的な特徴とされています。
鰓脚綱(アルテミア)の成長過程はこちらのページを見てください。

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別の個体の頭部です。
左の写真の白矢印の部分は背器官(dorsal organ)です。*ノープリウス眼ではないそうです。
複眼が小さな眼(個眼)の集まりであることも分かります。

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こんどは最後部の肛門節(尾節)の拡大画像です。
群馬県立自然史博物館 自然史調査報告書 第4号 内の
“群馬県内のカブトエビ(Arthropoda;Triopsidae)の生息調査”によれば、
肛門節(尾節)にある後縁棘の付き方によってカブトエビの種類を見分けることができます。
アメリカカブトエビの後縁棘は尾節の少し内側にあるのに対し、
アジアカブトエビ(Triops granarius)は尾節の後縁にあります。

この個体は後縁棘が尾節の後縁よりも内側にあるので、
アメリカカブトエビ(Triops longicaudatus)と同定できます。

日本にはアメリカカブトエビ、アジアカブトエビの他に
ヨーロッパカブトエビ(Triops cancriformis)が生息していますが
分布域は東北地方の一部に限られるようです。

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次に裏返して口器付近を観察してみます。
一番目立つ四角形の構造は上唇です。
上唇はノープリウス幼生のときから持っている構造です。
上唇に隠されるように大顎が存在します。
大顎の“歯”の部分は上唇の内側にあります。
咀嚼したものが、口外にこぼれないような構造になっていますね。
大顎の隣には小顎があります。
甲殻類は第1小顎と第2小顎の2個の小顎を持ちますが、
アメリカカブトエビは第2小顎がないそうです。
でも、この画像を見る限り小顎は2個あるように見えますね。
この辺りは後で解剖して調べてみましょう。

小顎からは正中溝が伸びています。
これは左右両側の脚の基部の間の溝の部分で、
口の後方に向かって棘が伸びています。

左右の脚の動きによって集められた餌が正中溝に移動して
さらに正中溝の中を口側に移動して
最終的に大顎で咀嚼されるという構造になっています。

口器の隣には短い触角があります。
甲殻類は第1触角と第2触角の2個の触角を持ちますが、
片方は退化しているようです。
Wikipediaによれば
“第二触角は著しく退化し、完全に欠如した場合もある。”
そうなので、これは第1触角かもしれません。

さて、それでは少し解剖してみましょう。
“甲殻類図鑑”では解剖した全てのパーツを記載するつもりですが、
ブログではダイジェストでいきます。

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こちらは小顎です。
基部は1本ですが、途中で二叉に分かれています。
口器の外観写真で2個に見えていた小顎は、
実際にはどちらも第1小顎の構造だったようです。

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つづいて大顎です。
解剖してみるとギザギザの歯があることがわかります。
カブトエビで最も堅い部分かもしれません。
カブトエビは雑食性ですが、
この大顎なら様々な食べ物を砕くことができそうです。

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第1胴肢の基部の部分です。
カブトエビを上から観察すると両側に各々3本のアンテナ状の棘が見えますが、
これが第1胴肢です。
左側の画像は基部の拡大画像です。
3本の長いアンテナ状の棘は③~⑤に相当します。
これらは内葉と呼ばれる部分です。
②の部分も内葉ですが、こちらは短いです。
①も内葉かもしれないのですが、勉強不足で分かりません。
この部分は正中溝の口側に伸びる棘の部分です。

内葉は付属肢の原節から生じる構造で、
原節からは内肢、外肢の2本の枝が伸びます。
この二叉構造は甲殻類の基本的な肢の構造で二叉型付属肢などと呼ばれます。
エビなどの大型甲殻類の胸脚の内肢は歩脚状に発達しますが、
カブトエビの内肢は退化的です。

第1胴肢には2枚のヒレ状部があります。
大きい方は外肢、小さい方は副肢です。
原節の底節から伸びる外葉を副肢と呼びます。

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第1胴肢に続く第2胴肢、第3胴肢です。
基本的な構造は第1胴肢と同じですが、内葉がコンパクトになります。
②-⑥は原節に付属する内葉です。
①も内葉かもしれないのですが、勉強不足で分かりません。
この部分は正中溝の口側に伸びる棘の部分です。
2枚のヒレ状部のうち、大きい方は外肢、小さい方は副肢です。
内肢は退化的です。

第4~第10胴肢は第2胴肢、第3胴肢と同じような形状です。
ただ、内葉は棒状から葉状に変化します。

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第11胴肢と第22胴肢です。
第11胴肢は内肢が拡張し育房に変化します。
外肢が蓋になって育房内部の卵がこぼれないようになっています。

右側の写真は第22胴肢です。
今回は第22胴肢までで解剖を諦めました。
これよりも後方にも胴肢の列は続きます。

育房より後方の胴肢(腹肢)は原節が短くなり、内葉は葉状に変化
外肢と副肢が大きくヒレ状になります。
ただ、基本的な構造は前方の胴肢(胸肢)と変わりません。
腹肢は後方に向かって徐々に小さくなりますが、
その分、数は非常に多くなります。

“節足動物の多様性と系統”によれば、
カブトエビを含む背甲目の付属肢は前部で35~71対
生殖節(第11胴節)よりも後部に24~60対の付属肢があると書かれています。
胴部の節数は25~44節とされています。
生殖節より後方の各節からは2~6対の付属肢が生じるそうなので、
節数よりも付属肢の数の方が多くなります。

*節足動物の脚は、体節に1対ずつ付属するのが普通なので付属肢と呼ばれます。
 頭部の触角や大顎も付属肢が起源です。
 一つの節(体節)から複数の付属肢が生じる場合、
 体節が融合した可能性があります。

さて、育房内部には数は少ないものの卵(休眠卵)が残されていました。
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休眠乱は一ヶ月ほど乾燥させた後に水に戻せば孵化するそうなので、
2世に期待してみましょう。

今回採取した5個体のうち、
冷蔵保存した4個体からは休眠卵を少ししか確保できなかったのですが、
1個体を3日ほど飼ってみたところ数十個の休眠卵を産卵したので、
こちらは期待できます。
休眠卵を手に入れたいときは数日でも飼育してみると良いみたいですね。

今回のアメリカカブトエビは群馬県藤岡市の水田から採取しました。
群馬県立自然史博物館 自然史調査報告書 第4号 内の
“群馬県内のカブトエビ(Arthropoda;Triopsidae)の生息調査”では
群馬県内のアメリカカブトエビとアジアカブトエビの生息調査が行われています。
なかでも藤岡市周辺の神流川の扇状地末端の湧水地域からの報告が多いので、
このエリアに絞って調査を行いました。
このエリアの水田にはコガムシの幼虫やホウネンエビなど水生生物が多く、
水質が良いのだろうなあ、と思いました。
藤岡市で取れたお米は安全で美味しそうです。

カブトエビを見つけるには場所も大事ですが時期も大事です。
何しろ寿命が短いので成体を見つけられる期間は10日ほどに限定されます。
一般的には5月から6月はじめにかめて見られるようですが、
群馬県は2毛作を行っている関係上、田植えの時期が遅く、
このためカブトエビの発生時期も6月最終週~7月第1週になるようです。

今回のカブトエビ採取に当たっては
水田や畦を荒らさないように、細心の注意を払って、
道路から柄の長い金魚網を用いて金魚すくいの要領で採取しました。
なので採取個体数が少ないのですが、観察には十分でした。

そもそも野生のカブトエビは共食いや、
捕食生の水生昆虫にかじられていることが多いので、
採取した個体から休眠卵を採取して育てる方が良いのかもしれません。

ここで紹介したカブトエビの写真を使用したい方は下記の
“ねこのしっぽ 小さな生物の観察記録”の画像利用のガイドライン
に同意して頂ければ無償で使用できます。
個人のブログやSNSに関しては連絡不要ですのでご自由に拡散してください。
皆さんに、この奇妙で古い生物を見てもらいたいですね。

参考文献:
節足動物の多様性と系統、岩槻邦男・馬渡峻輔 監修、石川良輔 編集、裳華房、2008年.
群馬県立自然史博物館 自然史調査報告書 第4号、
(5)群馬県内のカブトエビ(Arthropoda;Triopsidae)の生息調査 p48-53.

2020年6月20日 (土)

ヨコエビ画像集の更新案内6 タテソコエビ科 Stenothoidae Boeck, 1871

1月ぶりにヨコエビ画像集の更新案内です。
まだ終わってなかったんです。
今回はタテソコエビ科(Stenothoidae)です。
タテソコエビ科は世界に18属、日本からは1属2種が知られています。
第1底節は小さく、第2底節の下に大部分が隠れます。
第4底節は非常に大きく、下縁は丸く弧を描き、後縁は切断的になります。
大顎の臼歯と顎脚の外葉を欠くことも特徴です。
代表種のタテソコエビ(Stenothoe valida)は体長5mm、
山陰から九州西岸に生息するとのことです。

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新潟県糸魚川市で採取したタテソコエビ属(Stenothoe sp.6)です。
小さいため解剖が難しく、細かな特徴をつかめていません。
新潟県出雲崎と秋田県男鹿市で採取したタテソコエビ科(Stenothoidae)の1種と
同種かもしれませんが、よく分からないので分けています。
いずれにせよ、日本海側に分布する種のようです。

太平洋側からも似たような種(Stenothoe sp.1)が見つかっていますが、
種レベルの同定ができていません。
Stenothoe sp.1は南房総、牡鹿半島と瀬戸内海の明石から見つかっています。

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茨城県ひたちなか市で採取したタテソコエビ属(Stenothoe sp.7)です。
体表面に筋状の模様があることが特徴です。
Stenothoe sp.1よりも明らかに大きく、別種と思われます。
今の技術レベルなら、これくらいの大きさがあれば解剖できるかもしれません。

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北海道登別市タテソコエビ属(Stenothoe sp.5)です。
底節板が大きいことからタテソコエビ科と同定しましたが、
第1触角の柄節が太いことが気になります。

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北海道紋別市で採取したタテソコエビ属(Stenothoe sp.3)です。
登別から採取した個体と同じく、第1触角の柄節が太いです。
このタイプの種(あるいは属)は北方系なのかもしれません。

次回はメリタヨコエビ科 Melitidae Bousfield, 1973です。

2020年5月30日 (土)

ハモリダニ科の1種:2020年5月 川崎市

マサキの葉の表面に赤いダニを見つけました。
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採取時はハダニかと思ったのですが、
顕微鏡で見てみると、どうやらハモリダニ科の1種のようです。
ハモリダニ(Anystis baccarum (Linnaeus))に似ていますが、
見慣れていないので種レベルの断定はやめておきます。

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日本ダニ類図鑑によればハモリダニ(Anystis baccarum (Linnaeus))は捕食生で
植物上を盛んに動き回るそうです。
ハモリダニとは葉守ダニ、アブラムシなどを捕食する益虫とされています。

 

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前体部を拡大しました。
表面がつるつるしているので焦点が何処に合っているのか不明瞭ですが、
眼は2対、眼の前方に長い毛と、短い毛が一対確認できます。
とても分かりにくいので短い毛の根本付近を矢印で示しておきました。

 

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ついでに鋏角を分離して高倍率で観察しました。
鳥の嘴のように見える部分は鋏角可動指で、
鉤状に曲がっています。
この部分を獲物のアブラムシに突き刺すわけですね。
突き刺してから、鋏角可動指を曲げれば獲物を逃がさずにロックできそうです。
さらに2本の鋏角を使って獲物の皮膚に穴を開け、
滲み出てきた体液を吸うのでしょう。
上手くできていますね。
鋏角の構造は日本ダニ類図鑑のハモリダニ(Anystis baccarum (Linnaeus))の記載に一致します。
ただ、“鋏角の背毛は単条で2本”とも書かれているので、
もう少し低倍率で鋏角全体を見ておいた方が良かったです。
この写真からは鋏角背毛が1本だけ見えていますね。

ちなみに針でつついた感触ですが、土壌生のダニよりも柔らかい印象でした。
顎体部を切り取るときに体液がぶしゃ~と出るので解剖は難しいです。

2020年5月17日 (日)

ヨコエビの人道的な殺し方

代表的なヨコエビの紹介記事の途中ですが、
箸休めの話題です。
といってもヨコエビの話ですが。

数年間のことですが、
“甲殻類も痛みを感じるので捕獲、運搬、収容、殺す時には
人道的な方法を取らないといけない”という話がありました。
スイス政府はロブスターを熱湯に放り込む従来の調理法を禁じ、
事前に気絶させてから絶命させることを義務づけているそうですし、
オーストラリア サウスウェールズ州では「魚や甲殻類の人道的な殺し方」の
ガイドラインが存在するそうです。

このガイドラインでは、ロブスターなどのエビ類の場合は下記の3段階で
“神経中枢を破壊”することを推奨しています。

(1)カットしたり、茹でたり、あぶる前に20分は塩水か氷水につけておく
(2)尾と頭の接合部分近くの正中線を切り、頭に向かって切断する。
(3)尾と頭の接合部近く正中線から尾に向かって切断する。

ポイントは前脳・中脳・後脳などの頭部神経節だけででなく、
胸部と腹部の各節の神経節を破壊することです。

認定NPO法人アニマルライツセンタのHPでは下記のように記述しています。

“ロブスターは体の縦の線に走る中枢神経がある。
刺身(生食)やボイル(調理)するには、縦方向に鋭いナイフで切断することにより
これらの神経中枢を破壊しなければならない。”

では、ヨコエビの人道的な殺し方とはどんなものでしょうか?

 

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まずは上のヨコエビ(ヘッピリモクズ属の1種 Allorchestes sp.)を材料にして
“ヨコエビの中枢神経”を見てみましょう。
なお、このヘッピリモクズは今年の1月に茨城県ひたちなか市で採取したもので、
低温状態で持ち帰った後に、冷凍庫で保存しました。
低温で死亡したと思われます。

 

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ヘッピリモクズの胸部神経節を取り出したものです。
おそらく、第5~7胸節に対応しています。
本当は頭部の神経節も見たいのですが、
頭部と第1~2胸節付近の内部構造はぐちゃぐちゃしているので、
神経を取り出せませんでした。

これを見ると球形の神経の塊が3個あって、
それが2本の神経で連結されていることが分かります。
このような構造を“はしご状神経系”と呼びます。
また、神経の塊のことを神経節と呼びます。

はしご状神経系は原始的な甲殻類ほど顕著で、
鰓脚綱では神経節が小さく左右に分離し、
左右の神経節が2本の横走する神経で接続されるので
より“はしご的”になります。
一方、カニなどの派生的な十脚目では神経節が融合し、
“はしご構造”が見えなくなっています。

この写真の神経節は主に第5~7胸脚の運動と感覚を支配しているものと思われます。
歩いたり泳いだりするためには個々の神経節が連携して活動する必要があるので
神経節を繋ぐ必要がありますが、
ヨコエビの“はしご状神経系”では左右2本の神経で接続しています。
人間で言えば脊髄が左右2本あるようなものですね。

一方、今回の解剖では取り出せませんでしたが、
頭部には前脳・中脳・後脳という大きな神経節があって、
それぞれ触覚と複眼を支配しています。

さて、本題です。
ヨコエビの意思(意識)の中枢を素早く破壊することが
“ヨコエビの人道的な殺し方”につながるという事を前提に、
ヨコエビに意思(意識)というものがあるとすれば、
それは何処にあるのでしょう?
水波誠氏の書かれた“昆虫 -驚異の微小脳”中央新書、2006年では、
昆虫の場合には頭部神経節が眼や触覚などの感覚器官からの信号を統合し、
運動の指令を送り出していると、書かれています。
であれば、頭部神経節を破壊すれば意思(意識)は消失するようにも思えます。
(昆虫は甲殻類から派生した生物なので、内部構造はよく似ています)

一方で、甲殻類の“はしご状神経系”のネットワークが全体として
行動決定(意識)を担っているという可能性も考えられそうです。
哺乳類のように脳に情報処理を集積するのではなく、
複数の神経節が連携することで情報処理を分散処理するような考え方です。
例えば、第7胸脚が捕食者に触れたとき、
逃げるかどうかの最初の判断は頭部神経節ではなく、
第7胸節付近の神経節のネットワークが判断(反射)している可能性があります。
人間でも釘を踏んだら足を上げるなどの単純な反射はありますが、
甲殻類の場合は釘を踏んだら、頭部神経節が痛みを感じる前に走り出しかねません。
つまり、痛みを胸部の神経節が感じて行動しているという考え方になります。
(以上は、私見です。)

その様なわけで、オーストラリア サウスウェールズ州の
「魚や甲殻類の人道的な殺し方」のガイドラインでは
全ての神経節を一気に破壊することを推奨しているのだと思います。
実際、ロブスターの場合、頭部神経節を破壊しても動きそうですし。

結論として、ヨコエビに痛みを感じさせる間もなく確実に即死させるためには
全ての神経節を同時に破壊する必要があるわけですが、
潰さない限りそれは不可能なので、やはり今まで通り低温で神経活動を停止させる方が、
人道的と言えるでしょう。

今回のコラムでは多分に私見が入っています。
本格的に勉強したい方は前述した
水波誠著“昆虫 -驚異の微小脳”中央新書、2006年がお勧めです。

コロナウィルスのご時世ですし、この機会に
昆虫や甲殻類が痛みを感じるとしても、そこに意識があるのかとか、
そもそも節足動物に快・不快の感情があるのかとか、
頭を雌に食べられたカマキリの雄は何を考えているのか、
などなど、じっくり考えるのも良いかもしれません。

以上、ヨコエビを即死させるのは難しい、というお話でした。

2020年5月 6日 (水)

ヨコエビ画像集の更新案内5 アゴナガヨコエビ科 Pontogeneiidae Stebbing, 1906

GWも終わりですね。

緊急事態宣言の延長に『まどマギ』第3話と同じくらいの衝撃を受けましたが、
今回も代表的なヨコエビを紹介していきます。

アゴナガヨコエビ科(Pontogeneiidae)は世界に4属、
日本からはアゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata Gurjanova, 1938)
だけが知られています(日本海岸動物図鑑II)。
ただ、茨城県の沿岸ではアゴナガヨコエビ科が複数種見つかっていますし、
日本海岸動物図鑑にも形態的によく似た未記録種が日本の海岸に多数分布するとの記述があります。
日本海岸動物図鑑自体、1980年代の知見なので現在は日本から複数種記載されている可能性があります。

代表種のアゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata Gurjanova, 1938)の
尾節板は基部の幅の約1.5倍で、先端から約2/3で双葉となり、その先端は幅広く広がります。
一方で、形態的にはアゴナガヨコエビ科に似ていながらも、
尾節板が単葉の種類が宮城県から見つかっていて、海外の情報を含む文献調査が必要になっています。

16_pontogeneia-rostrata-type-1

ゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)の雄と思われる個体です。
Pontogeneia rostrata type 1としていますが、type1は触角柄部に鱗状の突起が有り、
第3胸脚と第4胸脚に長い棘があることが特徴です。
抱卵した個体がいないことからtype 1は雄の個体群と思われます。

日本海岸動物図鑑によれば、アゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)は体長8mm、
第1触角は第2触角よりも短く、副鞭を欠き、第3柄節の下縁先端に鱗状の突起があります。
第1胸脚、第2胸脚は小さく同型で腕節と前節は同じ長さ。第2、第3側板の後縁下部に1鈍歯があります。
尾節板の長さは基部幅の約1.5倍。先端から2/3で双葉になります。

 

17_pontogeneia-sp1

こちらもアゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)の雄と思われる個体です。
地域ごとに体色は少し異なりますが、
基本的には透明で眼の後方に紫色の斑点があります。
アゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)の雌(type2)は第2触角の柄部に
淡い青色の模様があることが特徴ですが、
宮城県の個体群は雄でも第2触角の柄部に淡い青色の模様があります。

 

18_pontogeneia-rostrata-type-2

アゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)の雌と思われる個体です。
便宜的にType2としていますが、type2は触角柄部に鱗状の突起が無く、
第3胸脚と第4胸脚の長い棘を欠き、第2触角の柄部に青色の模様があることが特徴です。
これら以外はtypa1に酷似します。
抱卵した個体が見られることから、type 2は雌の個体群と判断しています。
Type1と同様に眼の後ろに紫色の模様がありますが、
大型個体は体表面に茶色の模様が生じることが多いです。

 

19_pontogeneia-rostrata-type-3

この個体(type3)もアゴナガヨコエビ(Pontogeneia rostrata)と思われるのですが、
第1、第2触角に長い棘があることが大きな特徴です。
他にも体表面の体節に茶色の縞模様がある、などの特徴を持ちます。
type 3は雌個体を含みます。
今年の正月に茨城県で追加個体の採取ができたので、
解剖してType1Type2との比較を行っているところです。
ただし、これらのタイプの間で尾節板と第3尾肢の形態に大きな違いは無さそうです。
Pontogeneia rostrataに近縁な別種の可能性はあると思います。

 

20_pontogeneia-sp8
便宜的にPontogeneia sp.8としている種です。
第1触角と第2触角の長さは同程度、体表面に模様はありません。
触角には長いトゲがあります。
緑色の卵を持っていました。
先日のブログでも紹介していますが、
第3尾肢のトゲの長さと、尾節板の形状が明らかにPontogeneia rostrataと異なります。
(もっとも、こちらの種が本当のPontogeneia rostrataである可能性もあります)
Pontogeneia rostrataに次いで良く見つかる種です。
茨城県ひたちなか市、東京都伊豆大島、千葉県南房総市で採取したので
本州南岸に分布する種かもしれません。
日本未記載種の可能性があるので、専門家の方、宜しくお願います。

 

21_pontogeneia-sp9

便宜的にPontogeneia sp.9としている種です。
Pontogeneia sp.8と同じく第1触角と第2触角の長さは同程度、体表面に模様はなく、
第1、第2触角の柄部に長い棘があります。
基本的にはPontogeneia sp.8とよく似ているのですが、
体表面の模様が異なります。
この種を採取したときに解剖を行っていないので第3尾肢、尾節板の情報はありません。
(尾節板の解剖ができるようになったのはここ最近です)
ただ、この種は静岡県の美保半島の先端付近の東海大学近くの
テトラポット隙間の潮だまりに群れを作って泳いでいたので
必要であれば簡単に採取はできそうです。

 

22_pontogeneia-sp10

便宜的にPontogeneia sp.10としている種です。
宮城県の牡鹿半島で採取しました。
ただ、Pontogeneia属ではない可能性が高いです。
第1触角第3柄節の副鞭がある位置に鱗状の突起が有り、第1、第2胸脚は同型で、第3尾肢は双枝、
尾節板は楕円形、体色はオレンジ色などの特徴を持ちます。
第1触角の鱗状の突起はアゴナガヨコエビににていますが、
尾節板に切れ込みがないのでアゴナガヨコエビとは明確に区別できます。
尾節板の形状の違いは属レベルの違いであることが多いので、
アゴナガヨコエビ科の別属の可能性があります。
もっとも、アゴナガヨコエビ科かどうかも怪しいです。

もしかすると北海道の紋別市で採取したPontogeneia sp.3も、この種と近縁かもしれません。
Pontogeneia sp.3sp.10と同じく第1触覚柄部の第3柄節に鱗状の突起があります。
これらの種は北方系の分類群かもしれません。

アゴナガヨコエビのデータベースはごちゃごちゃしているので、
次回更新までに再検討する予定です。
Pontogeneia sp.3とsp.10はアゴナガヨコエビ科の不明属に移す必要があるかもしれません。


いずれにせよ、日本産のアゴナガヨコエビ科が1属1種と言うことはないと思います。
嘘だといってよ、バーニィ

2020年5月 3日 (日)

ヨコエビ画像集の更新案内4 カマキリヨコエビ科 Ischyroceridae Stebbing, 1899

コロナウィルスのせいで私のソウルジェムは濁ってしまいましたが、
皆様はどのようなステイホームをお過ごしでしょうか。

今回も代表的なヨコエビを紹介していきます。

カマキリヨコエビ科(Ischyroceridae Stebbing, 1899)は世界から17属、
日本からは4属が知られています。底節は退化傾向で、第3尾肢は第2尾肢よりも突出し、
枝は短く釘状でその先端部は鉤状になります。
代表的な属はカマキリヨコエビ属(Jassa)、ホソヨコエビ属(Ericthonius)、
ホソツツムシ属(Cerapus)です。カマキリヨコエビ属の第3尾肢は双枝、
ホソヨコエビは第3尾肢は単柄で第2尾肢は双枝、ホソツツムシ属は第3尾肢と第2尾肢が両方とも単柄です

12_jassa-marmorata
静岡県で採取したムシャカマキリヨコエビ(Jassa marmorata)です。
第2咬脚が非常に大きく、第6節(前節)の基部近くに棒状の突出部があります。
第3尾肢は双枝で、枝部分は短く、先端にカギ爪のような構造があります。
第2触覚柄部は第1触覚よりも長く、この特徴は日本海岸動物図鑑[II]の
カマキリヨコエビ(Jassa slatteryi)の記載に一致しますが、鞭部は5節であることが異なります。
(カマキリヨコエビ(Jassa slatteryi)の鞭部は2~3節)。
第2胸脚前節の突出部の形状はムシャカマキリヨコエビ(Jassa marmorata)に似ています。
カマキリヨコエビの仲間ではもっとも普通に見られます。

 

13_jassa-cf-morinoi
新潟県柏崎市で採取したモリノカマキリヨコエビ(Jassa morinoi)と思われるヨコエビです。
第2咬脚の前節の基部近くの突起(突出部)が先端に向かって細くなっています。
あまり多くは見られないようです。

 

14_ericthonius-pugnax
新潟県糸魚川市で採取したホソヨコエビ(Ericthonius pugnax)です。
ホソヨコエビ属の第3尾肢は単枝です。
雄の第2咬脚は大きく、指節、前節、腕節の3つの節で鎌状の構造を作ります。
代表種はホソヨコエビ(Ericthonius pugnax)で体長6mm、
第5胸脚の基節葉部が後方へ著しく伸展することなどが特徴です。
本州以南の海藻場に出現するとされていますが、出現は希と思われます。
ホソヨコエビは触角が切れやすく、完全な形の標本を手に入れていません。
この個体も片方の第1触角が切れてしまっています。

2020年5月 1日 (金)

ヨコエビ画像集の更新案内3 ドロクダムシ科 Corophiidae Leach, 1814

今回も代表的なヨコエビを紹介していきます。

ドロクダムシ科は底節板と腹部が退化・変形しており、
第2触角が著しく発達することが特徴です。
日本からは3属が知られています。

10_-corophium-acherusicum

アリアケドロクダムシ(Monocorophium acherusicumは体長5mm、第4~第6腹節が融合しています。
近縁のタイガードロクダムシの第4~第6腹節は融合しないので識別ポイントになります。
第3尾肢は小さく、柄部の外縁先端は突出せず、その単枝は卵形です
日本海岸動物図鑑によれば第2咬脚の指節に突起が2歯あるとされていますが、
“東京湾のヨコエビガイドブック”では
アリアケドロクダムシの第2咬脚指節の突起は3本とされています。
他の文献の記載について調査中です。
今回は第2咬脚指節に突起が3本(3歯)あるものをアリアケドロクダムシとしました。
なお、日本海岸動物図鑑ではアリアケドロクダムシを(Corophium acherusicum) としていますが、その後の研究で属名が変更になり、Monocorophium acherusicumとなったようです。

 

11_monocorophium-insidiosum
トンガリロドロクダムシ(Monocorophium insidiosum (Crawford, 1937) )と思われるヨコエビです。
頭部の突起が長く、第1触角柄部に突起があり、第2咬脚指節の棘が2本あります。
記載ページのタイトルではアリアケドロクダムシとしていますが、
トンガリロドロクダムシの可能性が高いと思われます。
ホームページ記載中にトンガリロドロクダムシの可能性に気がついたので中途半端な事になっています。

2020年4月29日 (水)

ヨコエビ画像集の更新案内2 ユンボソコエビ科 Aoridae Stebbing, 1899

ユンボソコエビ科(Aoridae)は第1咬脚が第2咬脚よりも大きいことが特徴です。
一般的なヨコエビ(雄)の第1咬脚は第2咬脚よりも小さいので分かりやすいですね。
日本海岸動物図鑑によれば、ドロソコエビ属(Grandidierella 属)の第3尾肢は単枝、
ユンボソコエビ属(Aoroides 属)の第3尾肢は双枝です。

7_grandidierella-japonica

ニホンドロソコエビ(Grandidierella japonicaです。
東京湾や万石浦などの干潟のほか、各地の海岸で見つかります。
普通種ですが第1胸脚が肥大した大型の雄個体は珍しいです。
雄の最大体長は2cmを超えるそうです。
類似の未記載種が存在するようなので同定には注意が必要です。

 

8_aoroides-curvipes

ブラブラソコエビ(Aoroides curvipesは2004年に記載された新しい種です。
日本海岸動物図鑑ではA. columbiaeという種を“ブラブラソコエビ”としていますが、
日本で見つかっていて“ブラブラソコエビ”とされていた種はA. columbiaeではなく、
全く新しい種であると分かったそうです。
A. columbiaeA. curvipesがシノニムの関係というわけではなく、
日本産のA. columbiaeに似た種と誤同定していたという流れのようです。
A. curvipesが新種記載された時にブラブラソコエビの和名が引き継がれたので、
この辺りの研究の流れが分かりやすくなっています。
2004年に新種記載されたブラブラソコエビ(Aoroides curvipes)は大阪湾産の個体をホロタイプ(完模式標本)に設定しています。
体長は4mm程度、雄の第1胸脚は肥大化します。長節が伸長し、腕節先端に達することが特徴です。

 

9_aoroides-longimerus

ケナガブラブラソコエビ(Aoroides longimerusは第1胸脚は毛状の棘が密生することが特徴です。
長節の棘は伸長して腕節の先端に達します。
あまり多くは見つかりません。
新潟県出雲崎町と宮城県女川町で採取しました。    

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